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「……友達と喧嘩をしたんです」
「友達……この前の裕人くん……かな?」
「あ、はい。そうです。」
BGMがやけに大きく聞こえて、椿は声を窄めた。
自分の声がやけに大きく響いている気がする。
しかしそんな様子に智は気にすることなく珈琲を啜った。
「それって僕か原因かも」
「えっ、え」
椿は違うといおうとして、口を噤んだ。
確かに……発端はそうかも……しれない……?
「はは、素直だね」
耳をくすぐるような笑い声とともにその言葉を聞いて慌てて首を振った。
あれだけ裕人に失礼だと言いながら俺だって失礼なことしてるじゃないか。
「あっいや!あの!土井さんのせいとかじゃなくて、あいつが悪いんです。あいつがあんな態度とるから……注意したら逆ギレされて」
「うん。」
慌てて弁解すれば智はふふふと軽く笑う。
椿はまたからかわれたのだとわかって表情を引き攣らせた。
喋りにくいのがわかったんだ。
それで喋らせてくれたんだ。
椿はゆっくりと言葉を選ぼうと、頭を回転させた。
喋らされるようになってしまうと言葉を選ぶ間もなくポンポン言葉が出て言ってしまう。
それこそ、言わなくてもよかったこともいってしまいそうで。
「俺が言われたら一番嫌なこと……言われたんです。」
「……それって?」
「……あいつと俺、幼なじみで……その関係が破綻してしまう様なことを……言われたんです……」
「そう、それは傷つくね……。」
椿は裕人に言われたことを思い出しながら、眉を寄せた。
智は神妙な面持ちで話を聞いてくれている。
「智さん……は、アルファ……ですよね」
「ん?…………うん。」
「…………オメガのこと……って、どう思ってますか……?」
BGMだけが鳴り響く閑散とした空気が、椿に言葉を催促する。
この人も自分の存在を否定したり、卑下したりするんだろうか。
そう思って咄嗟に言ってしまった言葉。
聞かなければいいことを聞いてしまったかもしれない。
椿はゆっくりと智を見た。
智もやはり少し話しにくそうに困ったような顔をしていた。
「……そうだね。……なんて言ったらいいんだろう。うーん……。」
どきどきする。
ここで智がオメガを軽蔑するような言葉を言ったらどうしよう。
オメガのことが大嫌いだったらどうしよう。
聞きたくない。
でも聞きたい。
聞いておかなければならない気がする。
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