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いつの間にか来なくなっていた連絡。
それなのに毎日連絡はないかとチェックしてしまう自分が煩わしい。
椿ははぁ、とため息を吐いて携帯を見るのをやめた。
夏休みは学校に行かなくていい分、家でゲームをしたり好きなだけ寝たりとすき放題出来て楽しい。
しかし友達が少ない分、時間を持て余してしまう。
毎週さほど遠くない実家に帰っている椿だが、この年にもなって親にべったりというわけにも行かない。
サークルには入っていないし、ゼミが同じ人も居るに居るのだが何故か自分には人が寄り付かない。
「街にでも行こうかな……。」
時刻はもうすぐ昼の3時を迎えようとしている。
特に用事はないが人間観察でもしていれば時間は潰せるだろう。
椿は放り投げていた服を身に着けると外に出た。
街はさすが夏休み、と言うべきか。
大学生がわんさかと居る。
郊外に比べて1度か2度ほど気温が高いと感じる中心街。
こんなに暑いのによくみんな外に出るな、と椿は汗を拭いながら街をぶらりと歩いた。
「あれ?ねえ!」
小腹も空いたことだしとりあえず何か食べようかと立ち並ぶ店を見ていた時だった。
後ろから聞こえた声に思わず椿は振り返った。
瞬間椿は顔を歪めた。
「蒼野くんだよね?」
振り返れば自分と同じ大学生と思わしき男ともう1人、嫌でも覚えている顔があった。
目を逸らしながら答える椿。
もう1人は同じバイト先のいつも突っかかってくる男だった。
なんでバイト以外の日にこの男に合わなきゃいけないんだ。
「あ、はい、蒼野ですけど。」
「俺同じゼミの篠原!見覚えない?」
椿は篠原と名乗った男を見上げた。
確かに見覚えがあるような気がして、こくりと頷いた。
「よかったー!あれ?裕人は?」
「裕人はいないけど」
「あっそーなの?いっつも二人でいるからさ、ずっと一緒なのかと思ってた!」
「いや、学校の時とかだけだよ」
「へー!そうなんだ!」
隣の男は何も言わない。
それどころかこっちを見ていなかった。
椿は不快感を覚えながらも、この場所から立ち去りたい思いでいっぱいになっていた。
「え?何してんの?1人?」
「そうだけど……」
「一人で男漁りか。日中より夜の方がいいんじゃねーの」
やっと言葉を発したと思えばこの男は!
聞こえた言葉に椿は、男を見た。
篠原は少し驚いた顔をしながら隣を見ている。
「ヒロくんちょっと!」
……ヒロくん?
「おいその呼び方やめろ」
「なんで?!ヒロくんじゃん!ごめんね蒼野くん!ヒロくん悪気はないんだよ!」
「へ?」
悪気がない?そんな訳ないだろ。
ありまくりだろ。
男の名前を思い出せないまま、ヒロくんと呼ばれたその男を見れば、男はちっと舌打ちした。
「もういいだろ。行くぞ」
「ええ?!待ってよ!」
「オメガになんか構ってられっか」
「そういうの関係ないでしょ!ヒロくんはすぐそういう事言うんだから!ごめんね蒼野くん。」
「あ、いや。」
「今度ゆっくり話そうよ!あとヒロくんの言うことはあまり気にしないでね!ヒロくんのあれは嫉妬みたいなものだから!」
……嫉妬?
ヒロくんと呼ばれた男がズンズンと先に歩いていくのについていく篠原。
椿は嵐のような出来事に首を傾げるしかできなかった。
「バイバイ!」
「あ、ばいばい……。」
手を振ってくる篠原に手を振り返せば嬉しそうにニコニコする篠原と。
なんだか尻尾が見えた気がした。
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