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第三章第七節:魔王トド松5
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sideチョロ松
気付けば、鏡の間に、皆して倒れていた。
ひび割れかけていた柱も、床も、嘘みたいに何事もなく、そっくりしていた。
魔鏡は…割れている。
砕けた黒い破片が床に散らかっている。
僕が、目の前の欠片のひとつに手を伸ばしかけると、途端に欠片からシューっと白い湯気があがり、それと一緒に欠片は蒸発するように消えた。
起き上がって振り向けば、他の欠片も同じように消えてゆくところだった。
「うぅ…」
軽い呻くような声がしたかと思えば、トド松も、十四松も、一松も、カラ松も、今まさに、意識を取り戻したところのようだった。
なんだか、いつもと変わらない寝起きみたいだな、と思った。
ただひとつ、おそ松兄さんの姿がないことを除いて。
「トッティ!」
十四松がトド松に抱きつく。
「やったね!よかったね!元に戻せたんだ!何もかも…」
弾けるような十四松の声は、徐々に下降していった。
トド松も一瞬だけ、嬉しそうな表情を見せたけれども、直ぐに暗い表情に変わり、右手を見やった。
痛々しい手の平の傷。
でも、そこに、魔鏡の鍵はなかった。
「おそ松兄さん…」
ぽつりと呟くのが聞こえると、カラ松の隣にいた一松が、途端に、わっと泣き出した。
自分より先に泣かれて、泣きようがなくなったカラ松が、紫色のパーカーの背を擦る。
「帰ろう」
***
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