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1年半後③
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(葵語り)
「しっかり前を向いて。セミオーダーだから、身体にぴったりだ。こういうやつは1つぐらい持っていないとな。よく似合ってる。うん、かっこいい。」
20歳の俺が着るには決して安くないダークグレーのスーツは、身体にしっくり合った。
先生がネクタイを通し、結んでくれる。
大学の入学式もこうやって送り出してくれたことを思い出した。
「はい、できた。今日の夜、帰ってきたらサラリーマンプレイしようか。」
軽いキスをしながら先生が言った。
は?サラリーマンプレイ?聞いたことのない造語だ。また変なこと考えてる。
「いちおう聞いてみるけど、何するの。」
「うんとね、葵が新入社員で俺が上司で、ダメな新入社員の面倒を見てあげるうちに、お互いに意識して、付き合ったばかりの設定でいちゃいちゃしよう。上司だとかしこまるから、先輩でもいいな。スーツのまま乱れる葵が見たい。」
こ、細かい。
今すぐ考えたような内容じゃないだろう。
長々とやりたいことを述べた先生は、ドヤ顔をして自分のネクタイを締め始めた。
言ってることは変態染みているのに、スーツ姿の仕草が格好いいと思えるの何故だろうか。
もしやこれがスーツマジックか。
ちなみに、ネクタイはお揃いの色違いで、先生が薄いピンク色で俺が水色だ。
「ほら、ヤル気になってきただろ?帰ってきたらやろうな。ある意味、結婚式より楽しみかも。結婚式に出席すると、幸せをたくさん貰うから、その分人恋しくなるんだ。葵もきっと分かるよ。」
「やる前提なの?そんなのやらないよ。」
「いいや、葵は絶対にやりたくなる。お前から誘ってくるって。あっ、そろそろ時間だ。行くぞ。」
時間は12時を迎えようとしていた。
俺は急いで上着を着て、先生の後を追った。
もう、先生と生徒とかを気にして町を歩かなくてもいい。元教え子なだけで、何も悪いことはない。
高校生のあの頃が懐かしくさえ感じる。
真夏の日差しの下、手を絡ませながらタクシーを待った。
見上げると夏の低い空が大きな入道雲を讃えていて、8月もあと数日なのに、未だ猛暑は終わる気配を見せなかった。
今日も暑くなりそう。
そして、とてもいい1日になりそうだった。
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