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そうだ京都へ行こう9
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(葵語り)
「……っ痛ったあ……噛んだ?」
長ったらしい気持ちの悪いキスから解放されたくて松山さんの唇を思いっきり噛んだ。
思ってもない俺の反撃に、松山さんは口を離し、驚いた顔で下唇を手の甲で拭る。手には血が滲んでいた。すかさず俺も唾液で汚れた唇を服で拭う。不快だ。
「……い、やです。松山さんとはそんなことしたくない。やめてっ……」
頬にあった松山さんの手を強く払った。
「逃げ場がないのに強がるね。その生意気さも好きだな。」
出来る限りの大きな声を出したつもりだが、松山さんは表情1つ変えず、ただ口角を少し上げただけだった。閉鎖感で息がつまりそうだ。
「俺は怖くないって言ってるだろう。楽しまないと、余計に葵君が苦しむだけだよ。あれ……何を探してる?もしかしてこれかな?」
俺の鞄の中から携帯を出し、こちらへ見せてきた。振動が『先生』と着信を知らせている。俺が取ろうとすると、サッと避けた松山さんが運転席側の窓を開け遠くへ投げてしまい、携帯が闇に飲まれた。
「……ちょっ……なにすんの……」
「これで余計な邪念は消えた。帰ったら新しいのを買ってあげるから。揃いにしてもいいな。」
埒があかない。信じられない気分で後ろに手をまわすと、ちょうど助手席のロックに当たった。運良くロックが開いている。相手を惹きつけて油断させた隙に、ドアを解放して逃げられるかな。携帯を拾いたいけど、この暗さじゃどこにあるか分からないし。
くそっ、どうしたらいいんだよ。
「君に噛まれた唇がまだ痛い。葵君、後で舐めてよね………なんか興奮してきた。早く宿に行こう。ここじゃ落ち付けないし。」
おでこがくっ付くくらい迫ってきていた松山さんが、出発しようと運転席に座り直した。
サイドブレーキを解除する。
今だっ………
後ろ向きでドアを開けると、背中から落ちそうに一瞬よろけるが、なんとか体制を立て直して、外に出た俺は一目散に走り出した。
キョロキョロしている暇はない。一刻も早く変態から距離を置きたかった。
下へ下へと必死に走る。
「おーい、葵くぅーん、逃げても無駄だよ。戻っておいで。」
慌てた松山さんが追いかけてくるのが空気で感じ取れた。俺だって本気で走れば松山さんくらい巻ける。
筈だった………
暗いため山林に入るのを躊躇っている隙に、あっと言う間に車で回り込まれた。予想外の状況に混乱した俺は派手に転倒する。
膝が焼けるように痛い。薄い綿パンが破れ血が見えていた。
これで逃げる気が一気に削がれてしまった。
「ったく、世話がやけるお姫様だよね。ここは後で俺が舐めてあげるから。血が沢山出てる。おいで。軽いな。」
「やだっ、おろせって。変態、キモい。やめろよ。やだやだ………」
軽々と担ぎ上げられて、助手席へ乱暴に降ろされた。
「次に逃げようとしたら、これより痛い目に合わせるから。分かるよな?」
みぞおちに強く拳を食い込ませ、髪を引っ張りながら、低い声で脅された。痛みと恐怖と自分の不甲斐なさに涙が滲んできた。
先生、先生、どこにいるの?
声にならない叫びが、嗚咽とともに消えていった。
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