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暗転からの脱出1
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(熊谷先生語り)
松山は用意周到な確信犯で、葵をどこかへ連れ去ってしまった。
おそらく俺は今まで生きていて1番焦っている。冷や汗と動悸が止まらない。
朝、無事京都に着いたと葵から連絡が入る。それから急遽観光に変更になったということで、トロッコ列車の写真が送られてきた。仕事の付き添い目的で行ったくせに、楽しそうに観光地を巡っているようだ。
こっちも京都市内には居たが、野田は正真正銘の仕事で契約先を回っていた。
コインパーキングで野田待ちの間、以前から感じていた松山への不信感が更に強くなっていくのを感じていた。
あいつは真っ黒な腹黒男だ。
京都で仕事をするつもりはなく最初から葵目的だったと考えていい。
先ずは釘を刺してやろうと思い、嵐山で昼食を食べる予定だったので、偶然を装って会うために向かった。
人力車のお兄さん達を交わし、野田と渡月橋付近で隠れていると、大きくてゴリラみたいな男と俺の可愛い葵が、肩を寄せ合い仲良く話しながら歩いていた。
非常に面白くない。人ものにベタベタ触って汚いだろう。不愉快だ。
葵もあんなやつに簡単に心を許しているとは、俄かに信じ難かった。
後を付けて歩き、葵が雑貨屋に入ったのを見計らって野田が奴に話しかけていた、
その後の松山が俺を見た時の固まった表情が忘れられない。
これで先ずは牽制できたと思っていた。
御飯を食べながら、甘えてくる葵をこれ見よがしに優しく相手をし、見せつけるように可愛がった。
それで諦めるかと思った。葵が松山にその気がないのは火を見るよりも明らかだったからだ。
食事後、仕事先へ行くとゴリラが言い張るので、葵達から少し離れた距離で後ろから車を追っていた。運が悪いことに途中で気付かれたらしく、狭い道に入り巻かれてしまう。
葵に何回電話をしても繋がらない。終いには圏外になり愕然とする。
既にここは京都府ではなかった。
「………あのさ、この状況はヤバくない?葵君が松山に誘拐された……よな。警察に行く?」
野田が不安そうな声で言った。
俺だってどうしていいか分かんないよ。
「警察に行っても相手にされないと思う。葵は未成年じゃない。自分の意思で行ったと思われて当然だから、事件性がないと駄目だ。」
指先からヒンヤリと身体が冷えていく。
だが頭はそれに反するよう熱く、冷静な判断が出来ずにいた。
「どこ行ったんだろう。レンタカーだし家には帰らないだろうから、この辺りに潜んでると思う。少し走ってみようか。運転は交代するから、しばらく葵君に電話してみて。」
何回電話しても出ないか圏外なので、諦めて松山が乗っている車を探した。その作業も辺りが段々暗くなってきたため困難を極める。
こんなことなら葵の携帯にGPSのアプリを入れておけば良かったと後悔する。ウザくても重くても無理矢理やるべきだった。
caféRの村瀬君なら松山の携帯番号を知っているかもしれない。
その前に葵へ最後の電話してみよう……
頼むから出て欲しい。
願を掛けて本日何度目かも分からないタップをした。
「…………もしもし?……」
やっと繋がり喜んだのも束の間、出たのは知らない女の子だった。
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