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暗転からの脱出3
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(熊谷先生語り)
葵の電話に出た全く知らない女の子は、ドライブ中に車に酔い、休憩している最中に暗闇で光っている携帯を拾ったのだそうだ。捨てられていた場所を聞き、そこで返してもらうことにした。
電話口で道を説明してもらいながら、運転している野田に指示を出す。
段々と山深くなっていく道に不安を隠せなかった。こんなとこに何しに行ったんだよ。
悪い予感が頭を過る。
着いた頃には辺りは真っ暗で、車のハザードランプだけが遠くからチカチカと確認できた。
受け取った携帯は確かに葵のものだった。愛用の板チョコ型スマホケースがバキバキに折れている。液晶にもヒビが入っていたが、辛うじて通話はできるようだ。
かなり遠くから投げられたと推測できた。
葵が自分の携帯を投げる訳が無いから、犯人はゴリラだ。品の無い馬鹿力だな。
俺と連絡を取らせないように捨てたのだろう。とっくに許せないが、更に怒りを覚えた。
「あの……この携帯の持ち主を探しているんですが、見ていないですか?」
ダメ元で聞いてみる。もう何でもいいから藁をも掴みたい気持ちだった。
持ち主がどうやら連れ去られたらしいことを軽く説明すると、彼女達は一生懸命に手掛かりがないか思い出そうとしてくれた。
野田は若い女の子にデレデレしていたが、少しすると何かに気付き俺に耳打ちした。
「あのさ、彼女達に葵君の携帯を拾ったって、松山に電話して貰えばいいんじゃない?届けるからって言えば、居場所を教える気がするんだけどな。知らない女の子だから、すんなり行くかと思う。彼女達は凄く可愛いし油断するでしょ。祐樹なら葵君の携帯の暗証番号ぐらい知ってるよね。」
「それは、そうだな……」
可愛いは余計だろう。が、野田にしてはいい考えだと思った。
暗証番号も知っている。前にこっそり見ていたら、俺の誕生日〝0203〟を押していて、悶えるくらい愛しい気持ちになったのを覚えている。
ちなみに、葵を全面的に信用しているから中身は見たことがない。
「申し訳ないんだけど、ここに電話して携帯を拾ったと言って貰いたい。届けるからって。出た男から居場所を聞き出して貰えないかな。」
一瞬きょとんとした彼女達は嬉しそうに笑った。
「ええ、いいですよ。連れ去られた方が見つかるといいですね。もしかして……知り合い以上とか、ふふふ、まさか恋人とかですか?」
「………そんな感じかな。ね、祐樹。言ってもいいの?」
「少しだけなら、構わない。」
「きゃー、すごぉい。もっと教えてください。」
俺が葵の携帯をいじっている間に、野田が代わりに色々答えていた。彼女達のキラキラとした目線が痛い。なんだか別の意味で楽しそうだった。
そして、早速葵の携帯から松山に電話をしてもらった。良心的な女の子に拾われて良かった。聞けば旅行中で家は隣の市らしい。
案の定、松山は居場所をすんなりと教えたようだ。ここから車で30分程の旅館だった。
彼女達に急いで御礼を言い、急いで車に乗り込んだ。
旅館に連れ込んでヤル気だったとは、貞操の無いスケべゴリラに呆れた。
絶対に許さん。
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