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ーそして夜…
寮のエントランスに緋結と一緒に向かう。
「晴れて良かったね!はやく見たいなー」
「…うん」
ああぁ…
いつもの事ながら行きたくない!
アイツがいなければ楽しめるんだけどさ。
「あ、そう言えばれいちゃんも来るって眞尋先輩が言ってたよ。良かったね、悠季くん!」
思ってたそばからこれだよっ泣
全然良くないからな、緋結!
「へ、へぇ…そうなんだ」
としか返せず、あっという間にエントランスに着くと緋結は伊咲先輩の元に駆け寄った。
…その隣には、流木。
「来ないかと思った。お前」
そう言って近付いてきた将に俺は息を吐く。
俺と流木のこと、菜由通して知ってるからなぁ…
「緋結に誘われたから…」
「まぁ、大丈夫じゃね?みんないるしさ」
「うん…」
だといいけどね…
「じゃあ行こー!」
短冊が飾ってある笹を手に伊咲先輩の腕に抱きつく緋結。
菜由と将は仲良く手を繋いで緋結たちの後ろを歩く。
…で、その後ろには俺と流木。
マジで帰りたい!
見たくもないし話したくもないから菜由たちの後を追いかけようとした。
だけど腕を掴まれてしまって。
「っ、なに…!」
「俺より先歩くなよ。…下僕のくせに」
はぁ!?
そう言って先を歩く流木にムカついたことは言うまでもなく。
て言うか、それよりも…
「下僕じゃねーからな!バカっ」
バタンッと入り口のドアが閉まって尚更腹が立った。
アイツ、マジで何様なわけ!?
「うわぁ!すごいキレイだねーっ」
距離をとりながら流木の背中を遠目越しに睨みつけて歩いてたら、前にも緋結たちと来たことある山の天辺だった。
忘れもしないあの日…
思い出したくないから頭を振って空を見上げる。
「わ…すごい…!」
空に広がるのは上から下にずっと繋がった星たち。
小さい光が数えきれない程輝いて暗い空を照らしていた。
「こんなにはっきり見えるんだ」
「すげぇな…」
菜由と将も感動しながら空を見ている。
まさか肉眼でここまで見えるとは思わなかった。
「新月で空気も澄んでるしね。朝から晴れてたし、今年は好条件だったと思うよ」
「…そうなんですか」
伊咲先輩のわかりやすい説明を聞きながらみんなで天の川を見上げる。
…約一名を除いて。
「あ!あれが織姫かな?」
一番輝いてる星を指差して緋結が言う。
「正解。よく分かったね」
「うん!来る前に眞尋先輩に教えてもらったからだよ」
伊咲先輩に頭を撫でられて嬉しそうに笑う緋結は幸せそうで。
微笑ましなる。
「じゃあ、彦星は右下のあの星ですか?」
「そうだよ。菜由くんもよく知ってるね」
「あっ、いえ…!」
みんな詳しくね?
俺全然わからないんだけど…
「ふふ、菜由くんも将くんと星の本読んでたもんね」
…あー、だからか。
「そうだ!笹、ここでいっかな?」
緋結が持っていた笹を中央の地面にさす。
天の川の光に、飾った短冊や笹の葉がきらきら輝いてるように見えた。
…どうか願いが叶いますように!
心の中で最後に念押しする。
「これからどうする?別れて見る?」
え!?
「じゃあ、見終わったらまたここに集合しようよっ」
えぇっ…
伊咲先輩の言葉に緋結がそう言って菜由たちも頷く。
待って!
そしたら俺、またコイツと…!
「あっ、なら俺先戻ってようかな!」
流木と二人きりが嫌でそう言っていた。
「俺は別にいいぜ。菜由は?」
将、神っ…
「うん、いいよ。みんなで天の川見れたから」
察してくれた将と菜由に土下座して感謝したい衝動に駆られる。
きっと緋結と伊咲先輩も…
「えー、悠季くん少ししか見てないけどいいの?」
「見れただけでもう満足だよ、俺は!」
もっと見てたいとは思うけど帰りたい気持ちが勝り過ぎていた。
「そっか…。悠季くん、数学の課題あるのに来てくれてありがとう。一緒に見れて良かったよ!」
「いや、全然…」
やった!
これで帰れる、と思った時伊咲先輩が口を開いた。
「数学の課題?」
「はい。テストで赤点とっちゃって…出すのが明日までなんです」
早めにやっとけばよかったんだろうけど、苦手だと後回しにしちゃうんだよな…
「そうなんだ。なら、鈴汰に手伝ってもらったらいいよ」
……………はい?
笑顔で言う伊咲先輩に頭の中がフリーズする。
「鈴汰、数学得意だったよね?」
「だ、大丈夫です!!一人でやらないと意味ないしっ」
フリーズしてる場合じゃない!
俺は流木が何か言う前に急いで断る。
「遠慮しないでよ、悠季くん。時間も遅いしれいちゃんに教えてもらった方がいいと思う!」
緋結まで何言い出すんだよー!泣
「だめだって!絶対っ…」
半泣きになりながら緋結の肩を掴む。
せっかく帰れると思ったのに!
「なら、鈴汰は?」
伊咲先輩が流木に聞く。
てか、そもそもコイツが教えるって言うわけー…
「…いいけど」
「はぁ!?なんでだよ!」
つい声に出して言ってしまった。
「み、未月くん…」
流木を睨みつける俺を止める菜由。
そんな俺に流木が近付いてきて。
「来いよ。未月、」
「っ…」
腕を引かれて耳元に流木の唇が寄せられる。
「黙って付いてこねぇと、俺とのことバラすぜ」
…コイツ!
俺にしか聞こえない声で言われて、見上げたらふっと笑われた。
「未月くん、どうしたの?」
「な、なんでもない…!」
そう言った直後、流木が俺の腕を引いて雑木林の中へズカズカと入って行く。
「頑張ってねー!悠季くんっ」
あぁ、俺の願いは叶わずに終わりました…沈
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