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「えぇっ、襲ったのってアイツじゃないんですか!?」
「違うわ。一体なんでそんな伝わり方をしたのかしら」
千倉先生はそう言って隣に座っている、なぜか小さく肩を丸めている菜野先生を横目で見た。それに気付いた菜野先生が小さい声で口を開く。
「……あの日、僕が勘違いしてしまったんです。流木くんと未月くんが付き合ってるって」
「なんでそんな勘違い……」
一番しちゃいけないヤツ! と心の中でツッコミながら、千倉先生から聞かされたあの日の出来事を頭の中で整理する。
ぇえっと、亜宮先輩に体育倉庫に呼び出されて媚薬を飲まされて……。それから流木、じゃなく男子生徒三人が俺を襲っていたらしい。
(てっきり亜宮先輩とグルで俺に嫌がらせしてんのかと思った。恋人って聞いてたから尚更)
でも、さっきの菜野先生の話を思い出すと自ら襲った相手をわざわざ自分の部屋に連れ帰ってまで看病みたいなことしないだろうし。何より先生たちがそれを止めるはず。
それに、菜野先生が付き合ってるなんて言ってる時点でそんなことはなかったわけで。
(俺も動転して変な勘違いをしてしまった……)
「流木くんが未月くんを連れて帰ろうとした時、千倉先生もそれを進めたのでもしかして二人は付き合ってるのかも、と思ってしまって……」
すいません、そう付け足す菜野先生に俺も謝る。
「そんなっ、俺も色々勘違いしちゃったから先生のせいじゃないですよ!」
なんてエンドレスなやり取りを菜野先生としていたら、千倉先生がコトッとカップを置いた。
「私も菜野先生に言わなかったのが悪かったわ。未月くんが記憶失ってることも、流木くんのことも。ごめんなさいね」
「お、俺は大丈夫です! ギリギリで助けられたからっ……」
ギリギリの意味が自分でもあやふやだけど、と思いながらも一つ、疑問になっていることを聞いた。
「でも、なんで俺が体育倉庫にいるってわかったんですか?」
亜宮先輩から言われた時、誰にも伝えずに行ったのに。たまたまだとしてもすごい偶然と言うか……。
「それは、流木くんのおかげよ。未月くん、その日化学の補習授業だったわよね。それが終わったのに帰って来ないって、流木くんが探してたの」
「ちょうど千倉先生が流木くんに会って、その話を聞いた僕と木崎先生も一緒に探すことになったんです」
「そう、だったんですか……」
(なんでアイツ、俺のことなんか。しかも子供でもないのにそんな探したりする?)
そこでも色々と疑問が湧いたけど、黙って先生たちの話を聞く。
「結局、体育倉庫にいるって見つけたのは流木くんなんだけどね」
「駆け込んだ時は驚きました……。ほんとに無事で良かったです」
無事、だったんだろうか……。
涙目になる菜野先生にそう思いながら中々納得できず。一番気になることを恐る恐る聞いた。
「それで、その……俺とアイツって、したんですかね……?」
俺が聞くと千倉先生と菜野先生が顔を見合わせて。
嫌な汗が頬を伝う。
(心臓が破裂しそう……!)
直には言いづらくて遠回しに聞いたけど、多分先生たちには伝わってるはず。
「……そうね。誤魔化した所でお互いの為にならないだろうから言うけど、してるわ」
「っ……」
はっきりと耳に入ってきた千倉先生の言葉。
記憶がないからどうしようもない。
でも、やっぱりその現実はちゃんとあって。アイツだけがそれを覚えてる。
やり場のない気持ちにぐっと唇を噛んでしまう。
「……流木くんを庇うわけじゃないんだけど、無理矢理ではないのよ。彼が貴方としてしまったこと」
「………………………………」
「仕方なかった、のかもしれません……。ただ、流木くん献身的に未月くんの体調見ていてくれてたんです。ご飯とかも買っていく姿見ましたし」
献身的……。献身的?
そこに疑問になりながらも俺は噛み締めていた唇が自然と緩んだ。
「だから、あまり責めないであげてくれる? 日頃の行いが悪過ぎて信じられないかもしれないんだけど」
確かに。
心の中で深く頷いてしまう。
でも、もう気持ちは落ち着いていた。
「……わかり、ました」
そう言うと、千倉先生と菜野先生がほっとした表情になる。
(て言うか、俺全部アイツのせいにして……)
なんて言う罪悪感に、今度は苛まれてしまう。さっき、携帯のことでも一方的にキレてしまったのに。
(寧ろ、お礼言わなきゃいけないんじゃね? 俺……)
「きっと、未月くんが思ってるより流木くんは優しいわよ」
「え、」
優しい? アイツが!?
そう思ったけど、今の俺にはそれを否定する権利は無くて。何も言えなかった。
「あと、あの薬は捨てて構いませんから……」
千倉先生の後でそう言った菜野先生にあの薬の用途を思い出して顔が熱くなってしまう。
それを隠すように俺は先生たちにお礼を言って、保健室を後にした。
──パタン、
「まぁ、優しいのは未月くん限定なんでしょうけど」
「……ほんとにあの二人付き合ってないんですか?」
「そうね……。一方通行ってとこかしら」
「一方通行?」
「ところで、薬って何のこと?」
「えっ、あ、なんでもないですよ!」
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