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春輝の過去5
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あの日のお兄ちゃんは何だか様子がおかしかった。
雨の日に、傘もささずにただ雨に濡れていた。
「………お兄ちゃん?どうしたんですか?」
あの時ゆっくりと顔を見上げたあの人の、泣きそうな顔が忘れられない。
いや、もう泣いていたのかもしれない。
「……………お兄ちゃん、なんかじゃない…」
「…………どうしたんですか急に…」
「そんな風に呼ばれる存在じゃないんです」
「存在じゃなくても、俺はそう思ってるんです。」
そう言って、俺はずっとポケットにしまっていたロザリオのネックレスをその人に渡した。
「……これ、俺の宝物です、お兄ちゃんが持っていて下さい」
「………だから自分はこんなものを持てるような存在じゃ…………!!」
「どんな存在かなんて関係無いです。
罪を犯したなら、償えばいいじゃないですか。
だから、これ、持っていて下さい。」
その日から、もうそのお兄ちゃんには会わなくなった。
今もどこで何をしているのか、俺は知らない。
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