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act.4
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その日の深夜二時。みんなを寝かしつけて、お弁当の支度も済み、自室に戻ろうとした時だった。
「ういー」
「開けろ?、こ主人様のおかえりだー」
「うーーい?」
玄関を控えめにノックする見知った声に、俺は普通に玄関のドアを開けてやった。
普通の人ならば、なんて迷惑なんだ、とか、こんなクズを寒空の下に放置しても大丈夫だろうとか、冷徹になれるんだろうが、俺はそうもいかない。
衣装を着たまんまの状態で、来たのだろうか、はたまた酔っ払っているせいだろうか、いつもより香西は色気のある雰囲気だ。
「ういー、もう疲れた、もう笑うのとか無理マジで無理」
「あはは、お疲れ様でした、もう寝る?」
「風呂!洗え!」
「じゃ、お風呂場まで歩いてほら」
日本男子の平均身長を上回る香西を支えながら、よたよたと歩き、風呂場までなんとか連れて行く。
今日はスーツのお仕事だったのだろうか、びしっと着こなしたブランド物のスーツはとてもよく似合っている。
いつもはフワフワ伸ばし放題の金色の髪も、大人しく撫でつけていたのか、所々崩れていた。
「もーほら、ちゃんと脱がないとシワになるよ!」
「ういー腹減った!」
「ご飯食べたんじゃないの?」
「食った!けどまずかった!」
「あらー」
「やっぱ、ういのが一番美味い!」
「あらー」
さっきまで笑うのとか無理マジで無理と言っていた香西は、さも自然な動作で俺に笑いかけた。酔いもその笑顔の助けにしているのか、ちょっと絆されそうになる。いや、もうすでに絆されてんだけどね。
びしっと着ていたスーツをなんとか脱がせ、まだ温かい湯船の中へ香西を押し込む。
うちの湯船さえ香西からしたら狭くて仕方ないだろう。
一回だけ香西の家を覗いた時は、この倍ほどある湯船が完備されていた。家に帰ればもっとゆっくり出来るだろうに、香西は必ずうちに帰ってくる。
クズでも帰巣本能とかあるんだなとか思う辺り、俺も人間まだまだだな。
「うい、頭洗って」
「はいよ、目つぶってな」
「おー」
甘えるように湯船から頭を出した香西の髪を、ゴワゴワからフワフワへと仕上げて行く。身長の割に、頭がちっさいので、やっぱモデルは違うんだなと実感。
ゆっくりマッサージがてら、洗髪し終えて、香西に声をかける。
「ほら、寝てないで、洗い終わったよ」
「んあー、身体も洗って」
「身体洗ったらご飯の準備遅くなるよ」
「あー、・・・分かった、」
「じゃ、準備しておくな」
風呂場で寝てしまいそうな香西だったが、ご飯で釣れば、湯船から出、いそいそと体を洗い出す。
そこまで確認してから、俺はキッチンへと向かい、軽い夜食を作ってあげる。
夕飯の残りで余っていたコンソメスープに、トマトソースとお米を突っ込んで、そのまま放置。
その間に浴室から、甘えた男の声がひっきりなしに、自分を呼んでいる。
「ういー」
「はいはい」
「はいは、一回!」
「・・・びしょ濡れじゃん、ちゃんと拭いてから出ろっていつも言ってるだろうが」
「ういが拭けばいいだろ」
「あらぁ」
びしょ濡れどころか、拭かないでパジャマ着ただろうというレベルなくらい、香西はびしょ濡れで浴室から出ようとする。
ちゃんとパジャマと一緒にタオルも置いたのに、香西はわざと困らせたいのか、未使用のままだ。
脱衣所が濡れているのは後で拭くとして、先にこのあんぽんたんをどうにかしないと、本気で風邪引きそうだ。
それ以上動かないように、もう一度パジャマを脱がせて、しっかり拭き、乾燥肌ですぐパサつく身体にボディクリームを塗ってから、新しいパジャマに着せ替える。
モデルなんだからそういうのをちゃんとケアしないといけないと聞いたのは、この前マネージャーさんに泣きつかれて、アドレス交換をした時の事。
周りのモデルさんなんかは、ちゃんと気を遣ってケアしてるらしいけど、本人は自分の事に対して無頓着だから、俺がやってあげないといけない。
「ういー飯!」
「パジャマちゃんと着て」
「着た、飯」
「はいよ、」
コトコト煮込んだリゾットを最終味見確認をしてから、お皿に盛り付ければ、飢えた獣よろしく、ダイニングテーブルに着席する。
まだかまだかと、焦る顔はやっぱ贔屓目に見てもかっこいいと思える。
「熱いから、ふーふーしてな」
「うるせえ、ういがふーふーしろ」
「自分でやんな、俺がやったらだーめ」
「あぁ!?奈緒にはしてるのにか!?」
「バカ、奈緒に対抗してどうすんだ」
「んのクソガキ、俺のういにふーふーしてもらえるとか、シバかねえと気が済まねえ!」
「まだ七つなんだから当たり前だろ!二十一の香西にふーふーはしません」
「・・・っち!ムカつく!腹立つ!」
ようやく酔いが覚めて来たのか、言動が元の香西に戻りつつある。
今はまだ小声で怒ってるからいいもの、こんな夜更けに騒がれても困るので、一回だけふーふーしてやった。
ついでにあーんもしろと言われたので、してやった。喜々として口を開けるけど、それでいいのかとちょっと不安になってくる。
ご飯を食べたら満足したのか、二階の俺の部屋へ行き、ベッドに寝そべる。
今日も俺は自分のベッドなのに、床なのか。
そろそろ二日連続は、腰が痛いと悲鳴を上げてる。
「香西、ベッドで寝たいんだけど、だめか?」
「あ?俺様とついに寝たくなったか!」
「違うよ、床だと痛いんだ」
「・・・ッチ、さっさと寝ろ!」
「あは、ありがとう」
この前ベッドをあらかじめ大きくしておいて良かったと思った。
香西が泊まるだろうと予測して、部屋に似つかわしくないほど、大きいのをつい、買ってしまった。
それでも男二人で寝るにはちょっと狭いくらいだけど、香西が俺を抱きかかえるように寝てくれれば何も問題はない。
いつもとは違う背中のあったかさに俺はすぐに寝息をたてた。
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