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その男、危険な香り04
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感情の表現が乏しく。
その為に嫌がろうが喜んでいようが伝えたい思いは上手く伝わらない。
寧ろ誤解を与える事の方が多かった。
そのせいで何かと昔から苦労してきた逢沢だがある人のお陰で今では理解者が増え、憎まれ口を叩けるほど良い環境へと変わっていた。
それでも今みたいに冗談やからかいに、上手く切返しが出来ない逢沢には困った事もある。
言い難く察して欲しい事まで言葉にしない限り、相手へ伝わらないと言う事はなかなか辛いことだ。
先輩とて、空気が読めない訳では無い。表情豊かであったなら今頃その書類と頭に乗っけている手を退けてくれるだろう。
それに赤く染まった頬だって隠してくれるはずだ。
現に今髪で遊ばれるのは心底不愉快だと熱い視線を向けて、目で訴えているのにも関わらず逢沢の心の声は残念ながら相手には伝わらなかった。
熱い視線は熱い視線だが、好意的なものではない。
しかし先輩はキャッキャと女子高生のような反応を返してきた。
「先輩、俺の頭に手を置く為に来たわけじゃ無いですよね」
「お前相変わらず生意気だなぁ。それもこれもあの人がお前を甘やかすからだぞ」
仕方ないと嫌味を兼ねて要件を尋ねれば、返ってきた返事にパソコンのキーボードに添えていた手が無意識にピクリと反応を示す。
「そういえばいつ帰ってくるんですか?」
「早けりゃ今日じゃないか。何はともあれ結果次第だろうが、まあいい加減開放されたいよな。この案件のグループに入ってるってだけで俺は胃に穴が開きそうだ」
先輩の愚痴なんて聞いてはいないが余程疲れているのか今回の大型案件への愚痴の嵐はなかなか止まない。
しかし、同時に良い情報を得た。
逢沢が懐き、思いを寄せる彼が今日の結果次第では出張から戻ってくると情報を手に入れたのだ。
逢沢は密かに胸を躍らせる。
それに釣られる様に唇も微かに緩んだ。
密かにも何も、周りから見ればそれで笑っているのかと凝視されることには間違いないだろうが。
逢沢にとっては笑顔に入るのだ。
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