アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
照れる。
-
授業なんか普通にダルくて保健室行ってベッドでサボろうかと思ってたけど、キモ川の反応が面白くてサボるなんて考えはどっかに行ってしまった。
それからの授業はずっとそんな感じ。
休み時間、珍しく自分からキモ川の席へ足を動かし問いかける。
「俺になんか付いてる?」
「えっ」
ギク、と背景に効果音が見えるほど驚きを顔に出す。変なやつ。
「ええ⋯と、ね、あの⋯」
もごもごと口ごもり、俯いて顔を見られないよう手で覆う。なんだ、はよ言えやといつもの俺ならイライラして急かしていたところだが。
イライラどころか自然と口角があがる。
多分、俺の一言で赤くなったり真っ青になったりするコイツが、俺は面白くてたまらないんだと思う。
「⋯ね、くたい⋯が、」
「あ?」
「その⋯」
「なんだよ。今更返せってか」
少し尖った言い方をすると、キモ川はばっと顔を上げて、
「ちがっ!!違います、上谷くん普段ネクタイしてないから⋯」
と言いかけて、また俯いた。
そして小声で、
「ネクタイ似合うなぁって、かっこいいな⋯⋯って、」
と言った。
「あ⋯⋯そ。」
「あぁっごめんね、気持ち悪いよね!?今の取り消しで⋯」
なんと言うか、言葉が出なかった。
こいつ普段あんなにオドオドしてんのに、直球でカッコイイとかいう褒め言葉出てくんのかって。
なに、また顔赤くなってんぞこいつ自分から言い出したくせに。意味わかんね。
まじで理解出来ん。
「⋯⋯返す。」
「えっ!?あ、」
ついさっきかっぱらったネクタイを解き、キモ川にポイと投げる。
目を合わせずその場を去り、ジュースを買うため廊下へ出た。
ジャリジャリとポケットの中の小銭を探り、自販機の前で立ち止まる。
てのひらには100円と50円。買うものなんていつもと同じで戸惑う必要も無いのに、うまく体が動かなくて。
あの、耳まで赤く火照った顔と、幸せそうなやわらかい声。
キモ川の発したセリフが、何回も頭の中をぐるぐる回って、ほんのりとした温かさがじわじわ体の中を侵食する。
こそばゆいのに、心地がいい。
なんなんだろうな、これ。
「⋯⋯ああ、そうか。」
嬉しいのか。俺。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
29 / 39