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12献身的な太宰
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「ん……」
目覚まし時計なんか無くても、私は大抵規則通りに目が覚める。
まぁ覚醒には少々時間がかかる質だが。
いつも通りの天井を見上げ、数回瞬きをする。
視界のぼやけが晴れて、意識が動く。
さぁ、そろそろ起き……
「……そうだった……」
起きようとした途端、何かに襯衣が引っ張られたと思ったら……
昨日は中也と同じベッドに入ったんだっけ。
昨日と言っても、今は6時で、寝たのが2時なのだから四時間前だ。
中也の身体に伴った小さな手が襯衣の裾を握り締めている。まるで、幼子の様な……。
「中也、君の寝顔は本当に天使だね」
聞こえないのをいい事に、少し恥ずかしい位の台詞をかけてみる。
まぁ実際天使の様なのだから、気障も糞も関係無い。
「ん゛……」
おっと、起きたかな。
掠れた唸り声をあげて中也が身じろぐ。
「ふ……ぅ……う……?」
長くて重たそうな睫毛をゆっくりと開かせる。ちょっとした毛束が睫毛にかかり、影を落とす。
「お早う中也。良く眠れたかい?」
「ん……。」
瞼を数回閉じて、首を縦に振る。
す、素直っ……!!
「身体、痛い?」
「……痛い……」
視線を泳がせてから、また私を見つめ見る。
「だーざ、い…」
「っ、ん、なんだい?」
くいくい、と二三度裾を引っ張られ、名前を呼ばれる。
「腹減った……」
「あぁ、そう。じゃあ何か作るよ」
中也の指を1本ずつ解し、その手から逃れる。
中也も、手を伸ばす程離したくない理由ではないらしく、中也の手はパタリと布団へ落ちた。
「お粥とかでいいよね。」
「……まご……」
「ん?」
「たまごのっけろ…」
枕を抱きしめながら、中也はそう呟いた。
何時も洒落くさいクセに、こういう所は子供な感じがする。
中也に隠れて笑いながらも、相棒の内面を一つずつ解いてくれる、この空間がたまらなく好きだ。
確か中也の好きな味はうす塩だ────。
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