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俺が何も言わずにここを受験した時、彼方はどんな気持ちだったんだろう。
陸上の強い高校からの推薦を蹴ってまで、俺を追いかけてきてくれた。
その時彼方は何を思ってたんだろう。
全然わからない。
無表情が歪んで、彼方の瞳からどんどん涙が溢れていく。
「あいつになんか、渡したくない。」
それが彼方の本音なのだろうか。
たくさんの強がりの中に隠していた……違う。
彼方は昔からただ、まっすぐだった。
「どこで、間違えた?どこまで戻れば、また前みたいに戻れる?
なぁ、梁瀬…」
いつだって、前を向いてたはずなのに。
こんな後ろ向きになってしまったのは、俺のせいなのか…??
「いつだって、戻れるよ。
俺は彼方が大切だし、彼方も俺を大切にしてくれるなら、まだ戻れる。」
「…それでもお前は彼を選ぶんだろ」
「…うん。俺は、彼方のことは選べない。久夜が好きだから。
でも、彼方が大切なことにも変わりはない。
俺さ、彼方が走ってるところ好きなんだ。
だからまた、俺と走ってよ。」
残酷なことをしてるのかもしれない。
自分の都合のいいことだけ、彼方に押し付けている。
その自覚はある。
気持ちには答えられないけど、大切、なんて本当馬鹿げてると笑われるかもしれない。
だけど、大切って思う気持ちは本当なんだ。
俺は、彼方を嫌ってたわけじゃない。
怖かっただけ。
こんなの言い訳にしかならないんだろうけど、もっと早く向き合うべきだった。
遠回りしないで、なんであんなことしたんだって、もっと早く聞くべきだった。
時間が経ちすぎて、遠ざかった気がして、彼方が本当は引っ込み思案だったってこと忘れてた。
本当はすげー優しいやつだって忘れてた。
「ごめん、梁瀬。ありがとう。
彼もきっといい人なんだろうね。幸せに。
でも、俺が梁瀬を好きってことは忘れないで。喧嘩したら容赦なく奪いに行くから。」
涙を拭って笑った彼方は、俺に昔を思い出させた。
泣いていた彼方を助けたあの日のことを。
あとで、久夜に昔のこと話そう。
久夜はきっと笑って聞いてくれるだろうから。
じゃあね、と言って、彼方は鞄を持って教室を出て行った。
自分の教室でもないところで1人いてもしょうがないから、すぐに久夜の待ってる教室に戻った。
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