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右側に新垣先輩、左側に彼方を連れてゴールを目指す。
俺より足の早い二人だから、結局俺が引っ張られるみたいな形でゴールした。そのおかげで1位だったけど。
…嬉しいんだか、嬉しくないんだか、分からない複雑だった。
「中学の同級生と部活の同じ団の先輩……と、赤団クリアです!」
「あ、りがとうございます。」
よかった。とりあえずゴールできて良かった。
ほっと胸を撫で下ろした俺に、横にいた彼方がフワッと笑った。
何かと思ってみれば、彼方が真っ直ぐにこっちを見ていた。
「梁瀬、まさか梁瀬から来てくれると思わなかった。」
「…しょうがない、だろ。彼方以外に同じ中学のやついないんだから。」
「そうだね。でも、嬉しかったよ。あの日に戻れたみたいで…」
「……俺、もう戻るから。先輩団に戻りましょう。」
「あ、あぁ。いいのか?」
「はい。大丈夫です。」
……あの日のこと、彼方もまだ、覚えてたんだ。
俺だけだと思ってたのに……
俺の中の小さな出来事。幸せだった時間。
泡みたいに簡単に割れてしまうような偶然が重なったあの日を、大切に思ってたのは俺だけじゃなかった。
それが素直に嬉しくて、少し泣きそうになった。
「新垣先輩…?」
うつむいた俺の頭に、大きな手がのせられて、隣を見上げれば、新垣先輩が苦笑いをしてた。
……なんだろう、その苦笑いは。なんてどうでもいいことを考えたら、涙も消えてしまった。
「そろそろ京介って呼んでほしいんだけど。」
「え?」
「さっき、閑流よりは俺選んだだろ?それに頑張って走ったし。ご褒美くれてもよくない??」
「……そうゆうこと言うんですね、……京介先輩って。ちょっと意外です。」
まさか新垣先輩がそんなこと言い出す人だとは思わなかった……。
自分で言ってみたはいいけど、言った後に恥ずかしくなってまたうつむいて手で顔を押さえる。
あー、暑い。顔めっちゃ暑い。
「なんか久夜の気持ち分かったかも。
色別リレー、久夜だけじゃなくて俺と閑流のことも応援してくれよ?」
「あ、はい。もちろん!」
さっきのことは一切無かったかのように、別の話題を持ってきた京介先輩。
……ちょっと意地悪言ってるけど、やっぱり優しい人なんだよな。
席に戻って久夜と合流はしたけれど、結局すぐに色別リレーの召集の時間になって、久夜も先輩たちも行ってしまった。
俺はどうしようもないから、ニコニコしながら応援してる谷地島の隣に何気なく入れてもらう。
「廣川は俺のこと嫌いなのかと思ってた。」
「えっ、なんで?」
「なんとなく。」
「別に嫌いじゃないけど……なんで俺のこと見てくるのかな、とは思ってる。」
谷地島は基本はタレ目がちだけど、本当に時々鋭くなる。掴めないし、よく分からない。
ただそれだけだ。
「んー、なんとなく目をひく。見てたいだけ。
ない?そうゆうこと。ただなんとなくずっと見てたいもの、とか。」
「あんまり、ないけど。でも納得はした。」
でも俺はそんなに見ていたと思われるような存在ではない。と言うことを伝えたい。
谷地島とは元々話も続かないし、お互いそれ以上は何も言わなかった。
でもその空間が居心地悪いとかは一切なくて、喋らないくらいが俺たちにはちょうどいいのかもしれない。
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