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20夢と現実
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「っ……はぁっ、はぁっ……ぁ……」
気がつくと、部屋は明るくて、窓からは青空が見えて、知らない天井が見えて……
ここは……珠蘭……屋……
ぼうっとしていた記憶が起こされる。
江戸……時代の…………
なぜだか、無性にそれがホッとする。
ここが『江戸時代』だということに。
あの喧嘩ばかりの家の天井や風景はどこにもない。
畳。障子。布団。着物。ランプ。屏風。
ここは……江戸時代……。
ゆっくりと起き上がると、意識はしっかり覚醒してきた。
普通なら、『あぁ、戻ってないんだ』とか、『夢じゃなかったんだ』って、落ち込むんだろう。
だけど、俺からしたら戻ってないことがとても嬉しい。夢でなく、リアルであることに気持が落ち着く。
あの家には……帰りたくないし────
そんなことを考えていると、不意に部屋の外で足音がした。
「楓、起きてるかい?」
この声は……卯月さん……?
「はい。」
返事をすると、スッと障子が開いて、髪だけ結った卯月さんが中に入ってきた。
「おはよう」
「おはようございます」
俺の布団の近くに足を崩して座る卯月さんの姿は、朝から花を咲かせる。
「よく眠れた?」
「……わかんないです……」
嫌な夢……みたし……。
「そう。そろそろ朝ごはんの時間だ。一緒に行こう」
「ありがとうございます」
わざわざそれだけのために訪ねてくたのか……。
俺は布団を畳、押し入れに入れる。
そして服を────あ、着物だっけ
「あの……卯月さん……」
「着物なら手伝ってあげるから」
少し呆れたような、嬉しそうな溜息を付きながら、畳んで置いてあった着物をばらして、『こっちきな』と手招きする。
ふぁ……
「こらこら。でかい欠伸をしなさんな。間抜けヅラだぞ」
「ふぁい……」
まだ眠い……
てとてと、と卯月さんに近づく。
「ほーら、立ったま寝ない。肌襦袢を直して」
男性とは思えない世話やきっぷりだ。
「ん〜」
「全く。甘えん坊だな」
お母さんって、こんな感じなのだろうか……?
「はい。出来た。ちゃんと1人で出来るようになり」
「すみません」
目が覚めて、やっと自分の意識を取り戻した俺は、少しでも卯月さんに、甘えてしまったことが恥ずかしかった。
「何今更照れてんの。」
「ほんとごめんなさい」
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