アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
24夢と現実
-
「……どうしたんですか……?」
黙りっぱなしの、3人に恐る恐る声をかけると、若虎が、ばっと俺の方を掴んで、今にも泣きそうな瞳で俺を見た。
「えっ?何……」
「お前今まで大変だったな!!もういっそのこと、ここでずっと暮らせよ!!!!!!!」
「え?」
「は?」
「ん??」
若虎の発言に2人が顔を上げる。その顔は『何を言ってやがる』といいたげだ。
「おい若虎?お前は何を……」
伊助さんは焦りながら若虎を見て苦笑いする。
「だって、こんなの可哀想じゃないですか!!親もいない、身よりもない、しかもこの土地が分からない!!そんな楓を、数日で放り出すわけにはいかねぇっすよ!!」
熱く語る……というか、訴える若虎の目尻には涙が浮かんでいた。
……情の人なのか……?
「ふふっ、伊助、いいじゃないか。置いておやり」
卯月さんは若虎を後押しするようにクスクス笑う。
というか、この状況を楽しむかのように……。
その後にボソリと『面白そうだし』と、意地悪な笑顔を浮かべたのをきっと伊助さんは知らないだろう……。
「つってもなぁ、タダで置いておく程都合のいい見世じゃないんだけど?」
「裏方でもやらせてあげれば?今人手が足りていないじゃないか」
2人とも険悪なムードは出さないが、互いの視線はバチバチと交差していた。
「お前はどうしたい、楓」
「えっ……俺は……」
不意に話を振られて、少し考える。
まだ何も知らない人達に、迷惑をかけるわけにはいかない……。
だけど、ここから出たら俺はどうする事も出来ない。
また都合よくタイムスリップ出来るわけじゃないし。
頼れる人は寧ろここしかない。
それにここは────────
あったかくて…………
あの冷たくて動かない日常の家族より
喧嘩がなくて自由なこの人達の方が
好き─────────────
俺が『ここにいたい』と、願って、いることが出来るのなら……
あの悪夢の日常から逃げられるのなら……
俺は────
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
26 / 92