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洋菓子店タートル →side sizu
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僕は生まれた時から、洋菓子が常に近い存在で、友達には毎日ケーキが食べれていいよなとか言われていた。
確かに、失敗作などを加工したものがオヤツに出される事は多かったけど。
家は洋菓子店タートルという店で、それなりにその頃は繁盛していた。
昔気質な父親が作る菓子は、シンプルなものばかりで、時代には段々合わなくなり、都会やデパートで見るキラキラ綺麗な菓子へは変化しなかった。
いつか、一旗あげてこの店を継ごうと思っていたのに、急死してしまうとか、まったくあてがはずれた。
まだ、コンテストも数回優勝しただけで、フランスの店でのチーフパティシエにはなれていなかったのに。
それでも、この店を立て直すのは自分しかいないと思って帰ってきたのだ。
なのに…………このザマだよ。
昨日の夜は、助けてくれた若い青年がいたけど、今日は誰もいない。
店の入口に、怪我したまま立たれたら、営業妨害だ。
「すいません。そこに立たれたら、営業妨害ですよ。警察に電話します」
思わずカウンターを出て、文句を言いに歩み寄ると、地上げ屋に雇われた連中は、店の中に入ってくる。
「ああ、怪我をしたアニキの見舞いに菓子折りさがしてるだけですよ。お客に警察よぶんかい。この店は?!ああん?」
待っていたとばかりの反応に、僕はしまったと思う。
相手したらだめだと思っていたのに、朝から客がさっぱり入ってこないのに、イラついてしまった。
「選ぶのもなかなか時間かかるんでねえ。客には選ばせてくれんだろ?」
この店は、守りたい。
だけど、ここで邪魔されたらそれどころじゃない。
昨日の子は簡単にコイツらをのしていたけど、僕にはそんな力はない。
連中に、何も言うことが出来ずにうなだれていると、連中を気にせず、店のドアを開いて入ってきた身長の高い制服の高校生がいた。
どうしよう。
高校生があぶない。
ここは警察を呼ぶしかないか。
意を決して受話器をあげると、高校生は連中を見回して、
「あァ?アンタら昨夜のヤツらじゃね?オレのアタマどーしてくれんだよ。ちょっと悪くなっちまっただろ?慰謝料払えよ」
グイッと一番脅しをかけていたヤツの胸倉を掴んで、逆に脅している。
昨日の青年だ。
高校生、だったのか。私服だったから、高校生とは思わなかったな。
僕が驚いてその様子を眺めて立ち尽くしている間に、連中は高校生の腕を振り払うと、店を一目散に逃げ出していった。
「久亀サン、今日も絡まれてたんだ。ダイジョウブ?」
目つきは悪いけど、真っ直ぐ見つめてくる目を見返して、僕は笑って頷いた。
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