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「うぅ……行きたくない……」
「何言ってるの、自分で行くって言ったんでしょう?」
「それはそうなんだけどさー。俺嫌いなんだよー、神」
「嫌いって……秋人くん、あなた好き嫌い多すぎよ?」
エルと父さんの夫婦漫才のような会話を聞きながら、出かける準備を進める。
「今までの”嫌い”は面倒くさいだけだったんだけどね。アイツは本当に無理。想像するだけで鳥肌が立つ」
父さんがそこまで言うなんて相当かな。だって全部適当で、でも卒なくこなすような人なんだから。
「そんなに嫌いって何があったのよ……」
「っふふ。昔色々とね……」
そう言った父さんの顔は真っ青で、どんな過去があったのか、少し気にならなくもない。
と同時に、創汰さんって本当に何者なんだろうかなんて。
「さーてと、こんなんでいいかな」
父さんはもともと居候の身。
荷物が少ないのもあってもう準備は終わったらしい。
「え!?もう終わったの!?あたしまだ服も決まってないのに」
エルは……ご想像のとおり。
クローゼットをひっくり返しては鏡の前であれじゃないこれじゃないと騒いでいて。
「あ、そうそう、春陽は家に帰りなさい。天原くんには連絡しておいたから」
は?
てっきり僕も行くものだと思ってた。もう1回、創汰さんと、ウリエラと話して、一緒に帰ってくるものだとばかり。
「え、なんでよ、僕も行く」
「だめ。お前は留守番だよ」
「やだ。僕も行きたい」
「子供じゃないんだから聞きなさい。お前が行ってなにができるの?冬夜を連れ戻すために出来ることがある?明確なビジョンがない限り、お前は連れていかないよ」
「ビジョンなんて……ない。でもっ!」
「じゃあ連れていかない。天原くんと仲良くね」
突き放されたのが父さんの優しさだなんて、僕に考える余地はなかった。
父さんも、エルも、ウリエラも、冬夜も、創汰さんも、全員が当事者なのに僕だけが除け者にされているみたいではただただ悔しい。
会話のないまま過ぎていく時間の終わりを告げるチャイムが鳴る。
「天原くんだね。ほら、玄関までは送ってあげるから」
「別に、いい」
玄関までの道のりはそう遠くない。
ドアの向こうには相変わらずの優しい顔、じゃなくて、珍しく怒った顔が。
「夜中に急に飛び出して行って!私がどれだけ心配したと思ってるんですか!貴方が無事でいてくれたらそれでいいと言ったでしょう」
すごい剣幕で怒鳴り立てる灰吏さんを、信じられないものを見るかのような顔で眺めているのは僕。
隣で父さんが必死に笑いを堪えてなかったら、もっといい雰囲気になってたんだろうけど。
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