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救出
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あれは薬なんかじゃなくて、秋人の力だったんだと思う。
バタバタと廊下を走りながら、諸悪の根源へと向かう。
俺の部屋から秋人の部屋までは全然離れてはいないから、スグに扉の前についた。
さっきから頭の中に響いていた声は既に止まっていて、不安感が俺を襲う。部屋の中から聞こえてくる声が、秋人のものだけという事実が、ドアノブを掴もうとする俺の手の動きを鈍らせる。
’’見て見ぬ振りは辛い’’
そう、俺はここで躊躇っている場合ではない。しかも、ここでやめたらきっと後悔するし、第一春陽が怖い。
ガチャッ
思い切ってドアを開けると、ベッドの上の秋人とウリエラ。そしてそれに近づこうとするようにソファから立ち上がった灰吏がいた。
「あれ?どうしてここに来たのかな。…まさか冬夜も混ざる気になった?」
微笑…というよりニヤニヤを顔に貼り付けて、秋人が口を開いた。
「そんな訳ないだろ。ウリエラを返してもらいに来た。あと、灰吏も。」
「ふふ、ウリエラくん、ヒーローが遅れて来てくれたよ。もう頂くものは頂いたしね。仕方ない、返してあげるよ。」
「…ぅや?とうや!冬夜、冬夜、冬夜!怖かったぁ…うぇ、、ぐす、、、なんで、なんですぐに来なかったんだよ!ずっと…ずっと怖かったのにぃ…」
「ごめん。ごめんな、ウリエラ」
泣きながら俺に縋り付いてくるウリエラを見て、本当に怖い思いをしたのだと思った。それと同時に俺の不甲斐なさを痛感させられる。
俺は秋人に対して何も言わずにウリエラを抱えてその忌まわしい部屋を出た。
後ろからついてくる足音は灰吏のものだろう。
長い長い夜は、ようやく終わりを告げようとしていた。
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