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負け
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「だから、僕と別れようとか言わないよね。」
次に言おうとしていた言葉が彼の口から出てきて、思わず口を噤む。
「僕は冬夜と別れるつもりなんてないよ。何があっても。堕天する覚悟だって出来てる。」
そう言い切ったウリエラはいつになく堂々としていて、底の底まで惚れ込みそうだった。
「堕天する覚悟って…。堕天したらお前の帰るとこ、なくなるんだぞ!そこまで考えてる?」
その時一瞬見せた悲しそうな顔は、見間違いじゃない。でも、俺は拒絶しなきゃいけない。愛しい君のために、君が幸せでいるために。
「はぁ…。俺にはお前のこと、ずっと背負ってける自信ない。で、永遠の愛は誓えない。」
「なに…それ……」
「言葉のとおりだよ。俺がずっとお前を愛し続けるとは限らない。そうしたらお前はどうすんの?灰吏は春陽と、仲良くやるんだろうな。天界にも、この家にも、居場所のないお前はどうするか、ちゃんと考えてる?」
「それは…」
「考えてないんだろ?そんなんで生きてけるほど、この世界は甘くねぇよ。」
震えながら、それでも涙を堪えようとするウリエラ。
その姿を見ていると、さっきまでのは全部嘘だって、抱きしめて、キスをして、甘々に溶かしてやりたくなる。
「わかったら…「冬夜のバカ!」」
「僕がどれだけ冬夜のこと好きか、分かってないみたいだから教えてあげる。そんなんで揺らぐほど、僕は甘くないよ。」
被せるように言ったウリエラの言葉は、強かった。
どこにも言い返す余地がないくらい、真っ直ぐな言葉。俺の胸を抉るように、突き進むそれを、来るとわかってても俺は避けられない。
「堕天だって、本当は怖い。でも冬夜がいるから。ずっと僕のそばにいてくれるって信じてるから、できると思ったんだ。でも…でもっ!」
嗚咽が混じり始めたその声に聞き入るしかない。ふと、次の言葉を期待している俺がいることに気づく。
「冬夜が僕のことをどうでもいいって、いらないって思ってるなら仕方ない…よね。」
「いらないなんて思ってない。現に俺は…俺はお前の幸せを願ってるだけだ。」
「…ならっ!帰れなんて言わないで!僕は冬夜と一緒にいたい。それが僕の幸せだから!」
「はぁ…。俺の負けだよ。ホントに、俺の負け。」
悔しいけど、惨敗だった。そんな涙を見せられたら、どうしようもなくなってしまう、俺の。
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