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欠片
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「失礼します、ウリエラです。ってまた寝てるんですか、神様」
「あー、ウリエラくんー。俺のこと創汰って呼んでって言ったじゃないですかー」
あの部屋で目覚めてから数日、戦天使課に戻ることもできず、ずっと神様と一緒に過ごしている。
そして僕の想像してた神様像がボロボロと崩れていくのを、日々感じている。書斎に突っ伏して、情けない声をあげている目の前の人物を見ながら。
「書類が溜まってるんです。早くやってください、神様」
「うげぇ…なんかミカに似てきたかも…また下界に逃げようかな……」
”下界”か。
僕も最初の任務は行ったはず。というか、課長に聞いた時に、行ったようなことを言ってた。
なのに全く記憶が無い。
「下界ってどんな所なんですか」
僕がそう問うと、神様は満足げにニヤリと笑う。
その真意は分からないけれど、下界への興味で埋め尽くされている僕には、そんなことはどうだって良かった。
「危ないところですよ。とってもね。君みたいな可愛い子は、すぐに食べられちゃうかも」
「何言ってんですか、真面目に答えてください、真面目に」
茶化されたような気がして、ついつい憤ったような声が出る。
「本当に、危ないところですよ…」
そうしみじみと言った神様の視線はどこか遠くにあるような気がした。
「さて、ウリエラくん、散歩に行きましょうか!」
「いいんですか?僕が外に出ても」
僕はこの神様の居宅から出ないよう言われていた。だからしばらく、外には出ていない。
「俺がいれば大丈夫かな、多分。ちょっと待ってて。すぐ着替えてきます!」
その場で服を脱ぎ始める神様。上から順にシャツのボタンを外していく。
ふと僕は、彼の胸元に光るなにかに目が止まった。
「あの、それ…」
「あぁ、これが気になりますか?いいですよ、ウリエラくんにあげます」
手渡されたそれは、ペンダントのようなものだった。トップには薔薇をかたどったモチーフがついている。
今までアクセサリーになんて興味がなかった。でも、このペンダントは、どこかで見たことがある気がする。
「それはね、下界で買ったんですよ。多分。貰い物なんで分かんないんですけどね」
そっか、”下界”で。
尚更僕とは関わりのないもの。なのに、これを見ると切ない気持ちになる。
誰か大切な人を忘れているような、そんな気持ちに
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