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七夕 その18
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妖しく笑う緒方にまた秋月の心臓が跳ねた。
秋月のこの顔がたまらない。
緒方のスイッチがカチリと音を立ててオンになった。
「……違うってなにが…?」
「……はい…?」
「秋月はなんの事言ってんの…?」
「……え…」
「俺まだなんも言ってねぇし…でも違うって事はさ、俺がなにを言いたいのか分かってるって事だろ…?なに考えてた…?」
一気に畳み掛ける。
わざとゆっくりとした口調で追い込むと、秋月は簡単に追い込まれてしまう。
でも言えない。
初めて舌の触れるキスをした時の事を思い出していたなどと、秋月はとても口に出来ない。
失言だったと気づいた秋月の表情がまた変わった。
どこか少し怯えたようで、普段の何倍も色香が増す。
「ねぇ秋月…教えてよ…」
秋月の中で羞恥心が爆発的に膨れ上がる。
緒方がわざと言わせようとしている事は分かっている。
でも恥ずかしくて言えないのだ。
「当ててもいい…?初めてこういうキスした時の事…思い出してたんだろ…」
緒方は少し強引に秋月の頭を引き寄せ唇を重ねた。
舌を伸ばすと秋月が小さく吐息を漏らした。
本当にいつなればキスが上手くなるのか。
毎日何度も重ねているのに。
相変わらず息継ぎは出来ないし、受け入れるばかりで積極的に応える事も出来ない。
頭はすぐにふわふわとし始める。
他の事は考えられなくなる。
そんな秋月の様子を緒方はじっと伺う。
最初は身を固くしていた秋月も、こうしているとだんだん力が抜けてくる。
なんとか我慢している声が漏れ始める。
漏れる声は徐々に甘くなる。
緒方はつい夢中になってしまう。
今緒方の腕の中で必死にキスを受け入れているのはあの秋月だ。
学校ではアイドル扱いをされ、廊下を歩くだけで注目の的。
大会に出向けばファンに囲まれ握手攻めに合う。
女子からの人気は絶大。
秋月に想いを告げる人が後を絶たない。
その秋月が緒方の腕の中でこんなにも甘く切ない声を上げているなどと、誰が想像出来るというのだろう。
凛とした空気をまとい、幾度となく空へと挑んでいくみんなの知っている秋月とはまるで別人。
秋月に想いを寄せる女子達は、むしろ秋月が緒方のように迫ってくるところを想像するのだろう。
でも実際の秋月は緒方にされるがまま。
こんなにも従順だ。
緒方しか知らない秋月。
そんな秋月を見ていると緒方の独占欲は強くなる一方。
全部俺のだ…
俺の秋月…
欲望のままに秋月の唇を求める。
あの秋月が自分のキスでとろけていく。
そう思うと止まらない。
もっともっとと求めてしまう。
でもそろそろ秋月の呼吸が限界だろう。
ゆっくりと唇を離す。
秋月は荒い呼吸を繰り返しながら無意識に緒方にしがみついた。
その顎をもう一度持ち上げる。
「……正解だった…?」
緒方が問うも
「……せいかい…?」
秋月は何を言われているのか分からない。
ぼんやりとした思考回路は仕事を成さない。
頬を高潮させ、とろりとした表情でゆっくりとまばたきをする。
こんな秋月を見たからには緒方の理性も仕事を放棄し始める。
もう一度引き寄せ唇を重ねる。
背中に回された秋月の手が、ぎゅっと緒方の制服を掴んだ。
この頃にはもう花火大会の日に舌が緑になっていたかもしれないなんてパニックはすっかり忘れ去られている。
ただただ秋月を求める。
腰を強く抱き寄せ首筋に指を滑らせる。
最初はなんとか声を我慢していた秋月も、だんだんと声を抑えきれなくなっていく。
もっと秋月が欲しい…
好き…
好きだ…
止まらない。
理性が追いやられていく。
ふと、秋月の様子がいつもと違う事に気づいた。
なんだろう。
いつも必死にしがみついているだけなのに、今日はやたらと身体を密着させてくる気がする。
それから表情もいつもとは違う。
眉間に深くシワを寄せ、まるで何かに耐えているようだ。
……これはもしや触ってほしいという事では…
緒方の喉がゴクリと音を立てた。
ボルテージは一気に急上昇。
もう止まらない。
緒方の右手がするりと秋月の胸元を滑った。
秋月は小さく身体を震わせ、それでも決して嫌がる事はしない。
嫌がるどころかやはり今日はいつもと違う。
やたらとすり寄ってくる。
触ってくれと言わんばかり。
まるで身体を差し出してくるようだ。
緒方の理性は崩壊を始めている。
ボタンの隙間から指を滑り込ませ直接肌に触れる。
指先を滑らせるとまた秋月はぴくんと震え甘い声を漏らした。
これはもうたまらない。
止まらないしたまらない。
「秋月…」
名前を呼んでみる。
秋月のその表情を見た途端、緒方の理性は完全に崩壊した。
まだキスしかしていないのに、どれだけ甘い顔をするのだろう。
完全にとろけきっているではないか。
更に物足りなそうな瞳を潤ませ見つめてくる。
「……緒方さん…」
……ダメだ…
エロすぎる…
これはチャンス。
エロいと言えるチャンスが到来だ。
秋月は美しい。
エロいなんて言葉は似合わない。
でもどんなに美しくても人間だ。
好きな人に触れたいと思うし触れてほしいと思う。
当然の感情をちゃんと持っている。
秋月がその気になった時の色香は凄まじい。
しかも今日は珍しくかなり積極的だ。
理性が強固な緒方もさすがに我慢出来るはずがない。
とりあえず言ってみよう…
言うだけならいいよな…?
あれだけ言えないと悩んでいたはずなのに、秋月に煽られまくって口に出来てしまいそう。
緒方は決意を固めゆっくりと口を開いた。
「……秋月エ…」
「緒方さん…」
せっかく決意を固めたのに、同時に秋月も緒方の名前を呼んだ。
ここで秋月を優先させてしまうのが緒方らしいところ。
「なに…?どうした…?」
「……もぉがまんできない…」
崩壊した緒方の理性が更に粉々になって吹き飛んだ。
……あの秋月が…
もうガマンできないだと…?
また緒方の喉がゴクリと音を立てた。
触ろう…
めっちゃ触ろう…
つーかもう脱がそう…
めちゃくちゃにしちゃおう…
めっちゃくちゃにしてエロいって言おう…
ガマン出来ないなんて言わせてごめん…
そこまでだったのに気づけなくてごめん…
家に連れて帰ろうか…
心も身体も全部満たしてあげたい…
全部愛したい…
でもその前に少しだけ…
緒方の指が秋月のボタンに掛けられた。
「秋月…」
もう一度唇を重ねようとしたその時
「……かゆい…」
「…………んっ…?」
秋月は今、なんと言っただろう。
「……かゆい…かゆいかゆいかゆい…」
「……か…かゆい…?」
「かゆいっ…!」
かゆいとは…
緒方呆然。
「んー!かゆい!胸のとこ蚊に食われた!」
「……えっ…?」
「かゆいっ!かゆいー!」
ものすごい痒がり様。
「だっ…大丈夫?!」
「無理っ!かゆい!我慢出来ない!」
「どこ食われた?!」
「胸のとこです!」
「あっそうか!このへん?!」
「もっと上!」
「このへん?!」
「あっ…そこっ…」
「ここ?!」
「そこですっ…んっ…緒方さんっ…」
「なにっ?!」
「もっとしてっ…」
「あんまりかかない方がいいんじゃねぇの?!」
「やだっ…!もっとして…!お願い…!」
……なんだこれ…
緒方の心境は言葉では表す事が出来ない程複雑だ。
秋月は積極的だった訳ではなかった。
ただ痒みに耐えていただけだったのだ。
身体をすり寄せ出来たのも痒かっただけ。
ただただ痒かっただけ。
なのに秋月の発言は無駄にエロい。
どこから聞いても完全に情事の最中のもの。
しかも無駄に色っぽい。
でも秋月はそれどころではないようだ。
……いつから…?
……どっからかゆかったの…?
緒方は泣く泣く、でも優しく秋月の痒い部分をさすってあげる。
「やだ待って…!緒方さんっ…!」
「なに…?」
「そこ違う…!」
「……えっ…?」
「だからそこは…!」
また秋月の色香が増した。
まるで快感に震えているようだ。
でももう騙されない。
「かゆいのここだろ…?」
「ちがっ…!待ってだめ…!」
「秋月自分でやると掻き壊しちゃうから…俺がやってあげるから大人しくしてて…?」
「やだ…!」
「こら、逃げちゃダメ」
「そこは食われたとこじゃなくて…!」
「……ん?」
「緒方さんっ…!」
「…………あっ!!ごめん!!間違えた!!」
「わざとでしょ!」
「違う!!どっちもぷくってしてるから!!」
「そういう事言わなくていいです!絶対わざと!」
「違うって!制服の上からじゃ見えないから間違えるんだって!」
「間違えるはずない!」
「ホントに間違えちゃったの!秋月蚊に食われるとすげぇぷくってなるじゃん!あっ!でもやっぱなんかこっちは違う!全然違う!てか違ってきた!」
「言わないで触り比べないで!」
「こっち触っていい?!」
ハプニングにもチャンスを見い出しすかさず攻める。
「どうしてですか!」
恋人の敏感な部分に触れる事に対し、こんな勢いでどうしてと聞かれる緒方は可哀想。
「気持ちいいのでかゆいの誤魔化せるかもよ?!」
「駄目!かゆいから!」
本来緒方が触れたかった部分にやっと触れられたのに。
本来なら秋月も触れてほしい部分にやっと触れてもらえたのに。
痒みには勝てない。
「もう自分でやります!」
「ダメ!昨日血ぃ出ちゃったじゃん!」
「うー…かゆいよぉ…」
ぐずぐずし始めちゃった…
くそ…
可愛いなぁもぉぉ…
結局緒方は秋月に甘い。
でも嬉しいのだ。
理由はなんであれ、秋月が感情をむき出しにしてくれるのだから。
「緒方さん…直接触って…」
「……はっ?!」
「ここ…ここです…」
緒方の指先を導く。
「ん…気持ちいい…」
こんな事を言うのにただ痒いだけ。
緒方が触れたい部分まであと3cm。
でもそちらに触れたらまた違うと怒られてしまう。
……どうしてこうなっちゃうの…?
緒方は心の中で泣いた。
つづく
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