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7話目
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「ファーさん?あの、もうそろそろ予定地に行ってみますけど・・・、行きませんか?」
隣にいた彼の仕事相手をすっかり忘れていた。・・・恥ずかしいと内心焦るも、店での対応に慣れたおかげか、表に出すことなく、軽くお辞儀してみせた。
「嗚呼、ヒサヤマ。すまない、今から行く。・・・って、レイイチ、今日休み?」
「え?えぇ、今日は休みですが・・・。」
「なら、一緒に来てくれないか?見て欲しいんだ。」
ニコニコと嬉しそうなファオロ様の言葉に、驚きの声を上げたのは“ヒサヤマ”と呼ばれた彼だった。
「いやいや、ファーさん!?関係ない人を連れて行くのは、ちょっと・・・。」
ヒサヤマさんは少し困った様にチラチラと見ているのに気付くが、ファオロ様はそれを気にすることなく、「ね、行こうよ。レイイチ!」と満面の笑みを浮かべつつ、見えるはずのない尻尾を振っている様だった。
「いや、俺は・・・。」
断ろうと口を開くと、それを察したらしいファオロ様は、残念そうにシュンとしょげると、またしても子犬の様に目で訴えてきた。
・・・ズルいな、分かってんじゃねェのか?と苦笑を零した。
「ヒサヤマさんも言ってるけど、関係のない人を連れて行くのはダメ、って言ってるじゃないですか。」
ファオロ様は「でも・・・。」と俺の服を掴み、ヒサヤマさんを強請る様に見ていた。
「はぁ・・・、分かりました。えっと・・・。」
「嗚呼、旭 玲一です。」
自己紹介をしつつ、財布からいつも入れている名刺を取り出し、バーテンダーであることも教えると、ヒサヤマさんは驚きつつ、受け取ると、「久山ヒサヤマ 晃コウです。」と名刺を交換した。どうやら、不動産会社の人らしかった。
「っていうか、ファーさんが言ってたお気に入りのバーテンダーって旭さんのことだったんですね。」
久山さんはニコニコと人がよさそうな笑みを浮かべつつ、そう言ってのけた。・・・ファーさんが言ってたお気に入りのバーテンダー?とファオロ様へ視線を向ける。
「うん。レイイチは俺の特別だからね。」
そう言ってファオロ様は俺の手を取ると、昨日の様に手の甲に口付けた。それを見ながら、久山さんは少し引き気味に「ファーさん、旭さんが可哀想なのでやめてあげてください。」と助けてくれた。
「ありがとうございます。」と内心お礼を言いながら、小さく笑みを浮かべると、久山さんも笑みを返してくれた。そんな俺たちのやり取りが気に入らなかったファオロ様は、ムスリとした表情を見せた。
・・・表情がコロコロと変わるファオロ様は、子供の様で可愛いな、と内心呟いた。
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