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シオンの乗馬③
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「シオンは、今日が初めての乗馬だと言った筈だ。」
ハミドから、他者を捻じ伏せるような、強いオーラが立ち込める。
馬は前足の一方をそーっと掻き込むように動かしハミドに許しを乞うているようにも見える。
「あぁ、勿論お前が悪いとも。だが、詫び等と欲しくて俺が言ってるとでも?シオンに出来る事は何か示せと言っている。」
そんな、馬に無茶な‥
一生懸命、頭を上下に振っているが、ハミドは一切聞く耳を持たない。
「シオンがお前に、何をした。」あ‥、それを聞いて、そうだ俺が‥俺が先に、喧嘩を売ったんだと気がついた。
「シオンは、お前に何もしていないのに‥」「ごめんなさい、俺‥俺のせいです!」
馬から顔をあげて、俺に顔を向けると呆れたように「シオン、庇うことはない‥」
「違う、俺、ハミドと馬が仲良く歩いているのを見て、心の中で馬に、お前のこと嫌いだって、思って。こいつ賢いから‥それを勘付いて‥‥」
ハミドは俺を暫く見つめると、無言で馬に、向き直った。
前足をカリカリ掻いて許しを乞う馬も一生懸命、何か言いたげにしている。
「ハミド、本当にごめ‥」
「謝るなっ!」
大きな声に、俺と馬は、背筋をピンと伸ばす。
ハミドは大きく深呼吸をすると、「喧嘩、両成敗だ。レッスンはだいぶ遅れてしまった。シオンは少しでも乗れるように、お前はシオンをフォローしてやれ。少なくとも、今日は、ギャロップをマスターして貰うぞ。」
「はいっ!」
俺達は今度こそ、息を合わせてハミドに褒めて貰えるよう、頑張ろうと思った。
「はぁ‥っ、はっ、うぅ、」
立って、おろして、立って、おろして、
「ほら、もっと動きを合わせろ!」
「ふっ、うぅっ、ふぅ、」
さっきから馬の揺れに合わせて、スクワットのような動きをさせられている。
馬もあれだけ走ったあとなので、ギャロップと言われた動きをかろうじてしている。
「シオン、もっと滑らかに!腹筋を使え。」
「ふぇえ、えっ、えぅ、」
半べそを掻いて下におろすと、ポンと馬が自分の尻で俺を押してくれた。
「えっ?」
「シオン、今の動きは良いぞ!」
また下におりると尻があがる。
「それだ!」と、ハミドが褒めてくれる。馬が、俺を助けてくれてる。そのうちに尻を使われなくても立っておろしてが出来るようになった。しかも、この動きが今は全く疲れない。
馬もヨロヨロしていたのが、しっかりとした足取りでギャロップの揺れをはっきり伝えてくる。
「シオン、こいつと呼吸がピッタリだ。これがお互いに、楽な走り方だ。人馬一体の感覚だ。よく覚えたな。」
これが、人馬一体。
すごく貴重で、泣けるほどに切ない、幸せな感覚だった。
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