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ミハイルの憂鬱③
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side ハミド
『各自、位置につけ。』
ビルに降りた俺は無線で部下へ指示を送る。
狙撃手が屋上にいる見張りを二人頭から撃ち抜くと、潜んでいた側近達がビルの中に入り白煙筒を焚く。
父上達が監禁されているのは2階奥か3階入口。
通常ならば3階だろうが、正面突破した場合、三階の部屋までの階段は入り口に近いため、距離は2階奥が本命とされていた。
正面突破かしても良さそうには思ったが、安全面を考えると深夜や早朝ならともかく、日の出ている今の時間帯は隠密で動くには相当無理があると思い、軍用ヘリは近くの山に置いてきた。
そこから歩いて山を伝い歩き狙撃ポイントに行く者、民間ヘリで屋上のビルに降りた者等で、続々と周りを取り囲んだ。
準備が出来たので、俺とドハは一緒に行動を共にするゲリラ部隊に合流した。
カリフは『何故殿下なのですか、そういう危険な事は下々に任せてください』と切れていたが、俺は誘拐の可能性と、狂言の可能性、そしてそのどちらも…つまり、誘拐の可能性を知った父上がそれに乗った可能性というミハイルにとって自殺でもしたくなるような最悪の展開だけは避けたくて、今回このゲリラ部隊で最初に会う可能性の高い配置についた。
ドハは賢い奴だからきっと何を見ても口外はしまい。
そして戦闘力も高く買っていた。
案の定、2階奥にそれらしき部屋があったので、ぶち破って白煙筒を焚き、見張りを6人をドハと二人で丁寧に捕獲する。
本当は殺していくのが面倒がないが、もし主犯がいたら吐かせねばならない。
奥では襖に寄りかかり障子の作りに首を傾げている父上と、お茶の用意をする悲壮な顔のミハイルがいた。
父上は舌打ちしながら、腰にあてた両手を離し何だ意外に早かったなと人の悪い笑みを浮かべておられる。
2番目と3番目の可能性が濃厚になり、俺は父上に殴りかかった。
すると父上は一旦身体を沈めたかと思うと次の瞬間足を払われ柔道の大外刈りのようにふっ飛ばされた。
一瞬何が起こったか分からなかったが、とっさに受け身を取ると小さく『ほぉ…』と感心する父上の声が聞こえた。
『ハミド、随分身体を鍛えたようだな。お前に優秀な護衛は要らんだろう。俺に寄越せ。』
父上に投げ飛ばされたままの仰向けのまま畳に投げ出された体制で問いかけた。
『父上、今回の誘拐だが、これは貴方が企てたものではないかと動けなかった者が大勢おります。この場で俺に教えてください。父上は、無関係なのですか。』
ミハイルの眉がひくっと動く。
父上は俺の腹を上から抑えるように蹴り、黙れと言う。
ミハイルはふらふらと立ち上がると父上の顔をぶん殴った。
父上は抵抗もせずに綺麗なパンチを入れられてふっ飛ばされたが、向き直り、俺は何もしていないと唸る。
『ミハイル、誤解というのものだ。俺はテロリストの事を把握していたし、そいつらを手引きしたのは古参の貴族だったことも承知している。
ただ、奴らの計画はずさん過ぎるからあの電車に乗ったという些細な手伝いをしたに過ぎない。そして、お前が進めている新たな警備の件だが、どうやっても予算がおりない。お前、自分で肩代わりするつもりだったのだろう?そんなバカな事はさせられん。警備の必要性を説かせるためだ。』
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