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〜貧乏生活その③〜ハミドの初バイト
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side ハミド
早朝にゴソゴソと起きる気配がして、マスウードはコートまで着ているので声を掛けると、これからバイトに行くと言う。
『こんな朝早くにバイトだと?そんなものがあるのか。』
俺の質問のどこがおかしいのか、ケラケラ声を立て、ひとしきり笑って満足すると、新聞配達という学生の鉄板バイトの一つですよ、とその声には非難も込めているように聴こえる。
『勉強する時間に差し支えないよう早朝に、そして身体の健康も考慮して運動も兼ねていますから、新聞配達はとても健全なのです。大きく、事業もお金も動くようなハミド殿下には理解出来ないかも知れませんけどね。そうそう、生活費もそろそろ考えたほうがいいですよ。支払いは月末ですが、そうですね、10万稼げというのは辛いでしょうから、まずは一ヶ月で5万。それを目指して頑張ってくださいね。では、時間が惜しいので私はこれで。』
高圧的な物言いに厶ッとしたが、折角なので、俺もジョギングに行くかと用意して部屋を出た。
走って少しすると、道端に老人がうずくまっている。
酔っ払いがそのまま寝たのかも知れないが、このクソ寒い中で眠ったまま冷たくなられては、俺の気分も悪い。
少し躊躇いもあったが声を掛けると、老人は具合が悪いがこれから駅前で靴磨きをしに出かけなくてはならないと言う。
「家に帰って風呂にでも入れ。そんな身体で行った所で客に迷惑が掛かるだけだろう。」
ジョギングに付いてきた側近が近づいて来たが、そちらに目を向けて待機させる。
「いや、そんな時間はない。常連のお客が待っているんだ。これから行って6時までには支度して店を出さないと…」
仕方ないので、おぶって連れて行ってやることにした。
「若いの、悪いな。外国からの出稼ぎか何かか?」
チッ、また俺は老け顔を指摘されたのか…。
「…。学生だ。」
「ほぉ、そうなのか。日本の居心地はどうだ、今日は寒いが風邪を引かないようにな…。名前は?おれは坂上哲三(さかがみてつぞう)という。普段は靴を作っているが、靴磨きは仕事兼足を観察するための大事な趣味でもある。おっと人の足が好きな変態ではないぞ、実は今度娘が結婚するんだがな…」
話が止まらず、随分と懐かれてしまったようだ。
老人を靴磨きの場所まで連れて行くと、もう客が並んでいた。
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