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〜貧乏生活その③〜ハミドの初バイト②
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side ハミド
「お待たせして、すみません。直ぐにでも取り掛かりますから…うっ…うぅっ…。」
ご老人、いやテツゾーは道具を準備していたが、腹の辺りを抑えている。
「はぁ、だから言ったのに…。」
俺が呆れながら声をかけると、客も心配そうに覗き込んでいる。
むぅ…、これでは客商売としてどうなのだろう。
「テツゾー。靴磨きという手順はブラシとリムーバーで汚れを取り、クリームを少しつけて磨いて最後にクロスで仕上げればいいのか?」
つい、口を出すとテツゾーは驚いて靴磨きのバイト経験があるのかと聞かれた。
「いや、10歳から働き初めたのだが、その時の教育係が英国人でな。男の戦闘服は他人任せにするなと、スーツや革靴の手入れはかなり仕込まれた。我流で良ければ手伝うぞ。」
早速、テツゾーの前に座ると客はどちらでもいいと言うように足を出すので、テツゾーがシステムを説明する。
「磨きあげるだけの5分500円か、じっくりと手入れをする10分千円のコースがあるが…」
「テツゾー、俺はプロではないから5分は無理だ。ふむ、こうしよう。」
俺は客に向かって顔を上げると「今日は人の靴を磨く初めての日だ。俺はテツゾーと違いプロではないから10分800円で仕事をするが、出来上がりが気に入らなかったら、金は要らない。それでも良ければ請け負うがどうだ。」
それでいいと言うので、テツゾーにはその辺で拾ってきた紙にシステムを書かせて今日の所は客にそうして貰った。
6時から8時まで、2時間休み無しに皆も並んで待っている。
客の中に若い女性がいて、何故か缶コーヒーを差し入れてくれた。この差し入れを拒むのは人としてどうかと思い、あとでマスウードに理由を言って払えばいいかと礼を言って受け取った。
「寒いでしょう、それ飲んで温まってね。今日からここで、靴磨きしてるんですか?毎日、通っちゃいますねっ♪」
今日限定だと、何故か言いそびれてしまい、好意に礼を言うと、釣りはいいと千円くれた。
そんなに金に困っているように見えたのか、少し落ち込みもしたが、黙々と手を、動かし続けた。
最後の方で、とびきりいい革靴を差し出した者がいて、顔を上げるとカリフだった。
朝から青筋を立てている。
『敬愛する殿下、あなた様にかしずかれ、靴を、磨いていただく日が来ようとは、人間長生きはするものですね。』
コイツ、ちゃんと金は払うんだろうな…
小言よりもそちらが心配になった。
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