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プラン
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今日はいつも以上に疲れた。
疲労感と倦怠感が酷い。 自分から実行しておいてなんだが、やはり嫌悪感を抱いている相手と対面するのは気疲れを伴う。
復讐はまだ、例えるならナイフの先でつついた程度でしかない。この先、もっと深くねじ込んで、切り刻まなければいけないのだ。先のことを考えると多少の不安感はあるし、快く体が動くものではない。
だが自分で決めたことだ。この先のプランも自分で立てなくてはならない。
どうしてやろう。
どうやっていたぶってやろう。
憎悪と加虐心が滲み出る。
最終目標は、鈴谷と同じ立場に矢代を立たせることだ。それを完成させるには、鈴谷と同じ痛みと、恥辱が良い材料になる。
先ほど、裏庭の準備室でも考えの一つとして挙がっていたが、やはり、鈴谷がされたことをそのまま矢代に返すのが妥当だろう。
日にちは決めず、ランダムに呼び出して行う方が良い。決まった日に行えば、周囲にバレる可能性も高まるし、何せ俺の気力が持たない。
現段階では、矢代へ復讐する時間として、放課後以外は考えていない。土日などの休みの日はバイトを入れてしまうだろうし、第一、休日にあんな奴の顔など見たくない。
手段次第であるが、矢代へ復讐するのは、放課後、ランダムに行おう。きっと被虐性愛の資質がある矢代は、俺から加虐される合図である不規則な連絡を気にして、落ち着いていられないだろう。
そうであれば面白い。
ベッドの上で寝返りを打ち、顔をシーツに埋める。ほのかに、陽の匂いと、ひやりとした生地が頬を撫でた。布団の感触で、鈴谷の家に泊まった時の光景が呼び起こされた。
鈴谷の家には一度、泊まらせてもらったことがある。それはまだ鈴谷に何一つ傷が付いていない時期だ。平和な頃を懐かしく思う。深夜になってもゲームや他愛ない話をして、夜通し2人だけの空間、2人だけの時間を楽しんでいた。
……また、そのような時間を過ごせるだろうか。
今となってはもう、淡い理想のようなものだ。
同じ空間を用意されても、今では、以前と全く同じ時間は過ごせないのだろう。だが、鈴谷となら、それでも構わない。持ちかけるだけ、持ちかけてみようと思った。
枕元に放り出していたスマホへ、重い体をベッドに委ねたまま手を伸ばす。ロックを解除し、鈴谷へメッセージを送ろうとして、ふと脳裏をよぎったものに指を止められた。
………「男」が好き、とはまた違くて、
「俺」が好き、か。
相手が矢代でなければ面白がったりはしない。
他人から好意を寄せられることは単純に嬉しいし、その気持ちは尊重するべきものだと思う。
「過去の出来事」という厄介な隔たりがなければ、俺は矢代からの好意をきっと、受け止めるぐらいのことはできていた。
同性を恋愛対象として見ることを毛嫌いする人も中にはいる。だが俺は、誰がどの性別を異性として見ても、別に問題はないと思っている。
男女で愛し合うのが正しいとか、普通だとかいう、そういった考え方が普通でないし正しくないのだ。好きなら好きで、それで良い。
だが本当に、どう考察しても判明しないことが一つある。
なぜ矢代は、俺なんかを好きになったのだろう。
俺のどこを見て好きになったのだろう。
何か惹かれるものがあるとは思えない。何か接触があったわけではないし、何より俺には矢代との思い出が一切ない。あると言ったら中2以降の、嫌な思い出だけだ。好意を抱かれるなら、その前に何かしら矢代との記憶があってもいいはずだ。
なのに、無い。
何も見つからないことを悟り、俺は考えるのをやめた。記憶を漁っていては、このまま朝になってしまいそうだ。気になるところではあるが、特別知りたい話題でもない。
頭にまとわりつく不透明なモヤを振り払う。鈴谷へメッセージを送ろうと、親指を液晶画面の上で滑らせた。
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