アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
5 (過去)
-
過去の出来事の積み重ねが、今の自分を作っている。
偉い誰かはそう言ったけれど、
俺は捨ててしまうよ。
過去の出来事も、今の自分も。
==雪side==
荷造りを終えた後から中学の卒業式まで、俺は学校に行かなかった。
中高一貫の学校だし、そんなに低いレベルではないから、外部受験をするひともほとんどいなくて。
『体調が悪い』、そういった言い訳も、学校では自然に受け入れられたみたいだ。
さすがに、一緒に住んでいたアイツには途中で訝しがられたけど、翔兄がなんとかごまかして。
俺がいないことに気付いただけでも、いい方だな、なんて。
…自分で言ってて悲しいけど。
…でも、気付いてくれた、だから何?そんなことではもう、俺は揺れない。
試験なんて受けなくてもいいと翔兄は言ったけど、そこまで甘えるわけにはいかないから、俺はその数週間、必死に勉強した。
普段から真面目に授業に取り組んでいた俺は、コツコツとやっているタイプだったから、同じくらいか、それより少し上のレベルである翔兄の学校に合格できたのだった。
翔兄が理事長を勤めるその学校は、電車を乗り継いで数時間、というところにある。車で行けばそんなに時間はかからないみたいだけど。
電車に乗っていると、少しずつ、ビルばかりだった景色が木々に変わり。
目に優しいその緑色が、俺の心まで癒してくれるような、そんな感覚。
…これなら、忘れることが、できるかもしれない、
俺はそう思った。
その学校は、中高どころか、幼稚園から大学まである。
その中で、中学と高校とが男子校で、全寮制。
それ以外(幼、小、大)はもっと都心にあって、姉妹校である女子校の生徒も入学する共学。
…なんで中・高だけ男女分ける意味があるんだろう、
そう思って翔兄に聞いてみたら、
『あー、歴史が長いから、昔の名残が残っているんじゃないか?』
と、適当な答えが返ってきた。
だ、大丈夫かな、園田家…。
翔兄は長男だから、まだ若いのに早速、中高の理事長なんて任されていて。
詳しくは知らないけど、"園田"は他にもいろいろと経営しているみたいで、つまりはお金持ち。うん、簡潔。
俺の家もまあそんな感じだし、特に俺は一人っ子だから将来のこと、ちゃんと考えていかなきゃいけないわけなんだけど、
両親に言ったら『なんとかなるわよ、いざとなったら養ってもらいなさい。』と母。
…そんな息子でいいの、母さん…。
過保護なくせに、将来のことになると適当だなあと笑ったのを覚えている。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
16 / 223