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===第3章=== (彰)
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やっと手に入れたと思ったのに、
指の間からするり、大切なものは落ちていき。
気が付いたら、跡形もなかった。
やっと見付けたと思ったのに、
彼はふわり、見たこともない顔で笑い。
気が付いたら、俺は"園田君"でしかなかった。
==彰side==
"真中雪"は笑った。
『だって、初対面だもの。』
困ったように、わらった。
そんなはずはない、そんなはずは。
俺が雪を間違えるはずがない、
あんなに愛しい存在が、他に、…。
-ハ、ジ、メ、マ、シ、テ-
昨日の、雪の言葉が。
それを紡ぐ唇が。
頭の中をエンドレスで流れていて。
止まらない、
止まらない、
どうして、あぁ、どうして。
思えば、雪とは幼なじみなわけだから、
そういう"初めまして"なんていう挨拶は俺らの間になかったんだ。
気が付いたら、雪は俺の隣で笑ってて。
俺も、雪の隣で笑ってて。
それが、今更。10年以上の仲である俺らに、"初めまして"が必要なんて。
…有り得ない。
雪は、本当に忘れてしまったのだろうか。
今までの…俺達の思い出を全部?
俺のことも、俺の気持ちも、そして、俺への、気持ちも…?
体育館の舞台上で考えていたのは、そんなことだった。
"真中雪"が笑顔で拍手をしているのをどこか夢の中で見ながら、色々な憶測が頭を掠めては否定され、拒絶され、消えていく。
…俺と離れたこの1年で、何か大きな事故でもあったのだろうか?
それで頭を打ったとか?そして俺を忘れた?
いや、もっと前…あの"体調不良"で卒業式までの間中学を休んでいたのは、記憶喪失が原因?
いや、それとも、
忘れた、フリを、している…?
わからない。でも、理解できることは一つだけある。
どちらに、したって。
-何かのせいで記憶を無くしていたとしても、
全て忘れていることが演技だとしても。-
戻らない。
戻れないんだ、俺達は。
…最悪、だ。頭が割れるように痛い。
でも、諦めるわけにはいかない。
どんなに時間がかかったとしても、どんな手を、使ったとしても。
俺はお前を手に入れてみせる。
なぁ、雪。
『ずっと一緒』、
そう言ったもんな?
約束、したもんな?
忘れたなんて、言わせ、ない。
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