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…
生徒会室を出たあと、俺は同じフロアにある倉庫のドアをあけた。
ーー限界。
後ろ手にドアを閉めて、ズルズルと倉庫の床に座り込んだ。
ズラリと並んだ棚が見下ろしているかのように、冷たい灰色で俺を責める。
怖い。
過去が、
今に侵食して。
何が本当なのか、自分でもわからない。
自分の気持ちが、自分でもわからない。
ただ、忘れたいだけ。
大事だったものは、全部あの部屋に置いてきた。
俺にはもう、捨てるものなんてないはずで。
取り戻すものなんてのも、ないはずで。
『"忘れたい"と思うことは、覚えているのと同じ。』
身体を震わせていたあの子に俺が吐いた言葉が今更首を絞める、
それは、あの時の言葉が、多少なりとも俺に向かっていたからなのかな。
夜を越える度に、彼の存在感は色濃くなっていくんだ。
とめどないモノクロの思考の中で、
彼は、笑う。
笑いながら、あの声で俺を呼ぶ。
俺を呼びながら、手を伸ばして、
伸ばした手が俺に触れる瞬間に、
俺は現実に戻される。
その度に、安心する。
だけど、
伸ばした手が空をきる感覚も、俺は知っているんだ。
目を閉じれば瞼の裏のスクリーンで、
朧げなストーリーがエンドレス。
あぁ、頭が痛い。
彼は何のためにこの学校に来たのだろう?
わざわざ転校してきた理由は?
……ダメだ。
考えては、ダメ。
俺はもう、忘れると決めたんだ。
…それなのに、どうして彼のことばかり。
あぁ、
こんなことになるのなら、
気付かなければよかった。
普通の幼なじみとして、
お互いの人生を応援するような仲でいれば。
彼が俺を避けた始めたとき、
縋らなければよかった。
追求したのは愚かな自分。
知ったら最後。自分の気持ちに飲み込まれるような。
そう。
惹かれなければよかったんだ。
期待しなければよかった、
信じなければよかった、
(出会わなければ、よかった?)、
苦しすぎたから。弱すぎたから。
過去から逃れたい。
そう思っていたのに。
こんなに苦しくなるくらいなら。
今を捨てる覚悟だってある。
そう思っているのに。
彼はきっと、それを許さない。
俺は、消すことができるのかな。
消えることが、できるのかな。
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