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「最近、雪さん元気ないですねえ。」
「…そう、ですか?」
他愛もない話をしていると、突然副会長がそう言った。
「えぇ、何か考え事をしていることが多いしそれに、」
「…それに?」
「笑うことが増えました。」
「え?それって…」
元気、ってことじゃないのだろうか…
「いえ、雪さんは笑って守るひとですから」
「それってどういう…」
彼の言いたいことがわからず、僕は戸惑って彼を見た。
「ごめんなさい、余計なこと言いましたね、」
しかし、副会長は困ったように笑っただけだった。
「とにかく僕は、雪さんに元気になって欲しいのですよ。」
「副会長…」
彼の言ってくれたことがうれしくて、胸が温かくなる。
「ねぇ雪さん、それ、やめません?」
「え?」
"それ"が何を指すのかわからず、副会長の顔を凝視してしまう。
「"副会長"って。名前で呼んでくださいよ、」
知り合って1年も経つのに、よそよそしいじゃないですか。
そう続けた彼は少し拗ねたような顔をしていて、
それがいつもの副会長からはあまり想像できない幼さを持っているものだから、
僕は思わず笑ってしまった。
「ふふっ、そうですね、薫(かおる)先輩。」
すると薫先輩も、うれしそうに笑った。
「これからまた、忙しい時期がやってきてしまいますね。」
引き継ぎが終わってからは、本格的に行事などの準備が始まってしまうだろう。
「そうですねえ、でも、雪さんは仕事が早いから僕は楽ですよ?」
「そんなことないです、副会…薫先輩には、迷惑をかけっぱなしで…」
「ふふっ、今、"副会長"って言いかけましたね?」
「あ。バレました?」
「バレバレです。」
彼はおかしそうに声を出して笑った。
微笑むときと違って、いくらか幼く見える。
窓から入る光が、元々色素の薄い彼の茶髪をさらに明るく見せていて、
僕はなんだか、眩しいような気持ちになった。
目を、閉じてしまいたかったのかもしれない。
「とにかく、今年もよろしくお願いしますね、雪さん。」
「こちらこそ、よろしくお願いします、
昨年度よりは成長しているはずですので。」
「ふふっ、楽しみにしてますよ。
一緒に頑張りましょうね。」
『生徒会の仕事、一緒に頑張ろうね?』
「っ」
「雪さん?」
「あ、いえ、
がんばりましょうね、薫先輩。」
そうやって、見ないふりした現実が、僕を苦しめる。
直視してようがしてまいが、
現実は、僕を苦しめるんだ。
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