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「過労、みたいなものだから、きをつけてみてあげて、ていわれて…、
ぼく、わかって、たの…いつかゆき、たおれちゃうって、…しんぱい、で…」
そこで呼吸を落ち着けるように深く息をした蘭は、また少しずつ話しはじめる。
「せんせかられんらく、きたとき、も…
ぼく、むかえ、にいくって、ゆったんだ…
…でも、ふくかい、ちょが…いるからいいって」
「昨日は薫先輩が送ってくれたんだ…」
「っ、"薫せんぱい"、か…。
ゆきは副会長が、好きなの…?」
「そ、れはどういう…」
「ゆきにとってぼくはもう…!!!」
突然すごい剣幕で大声を出した蘭にびっくりして、
思わずビクッと体が震えてしまったのがわかった。
「…、ごめん、何でもない…」
「蘭…」
「…副会長、いつもゆきの話ばかりする…!
補佐はぼくなのに…!ゆきさん、ゆきさん、てそればっかり…!」
蘭はすごい勢いでそう言うと、また泣き出してしまった。
「ら、蘭、…薫先輩のこと、好きなの…?」
ひっくひっくと肩を震わせる蘭の背中を撫でながら、
混乱した頭のまま口が動いていた。
すると、ピタッと蘭の動きが止まった。
俯いたままの顔は見えなくて、でもかすかに震えているのが見てとれた。
かけ布団のシワが、蘭の握りしめる強さをくっきりと表している。
「ゆきは………ゆきはぼくのなにをみてたんだ………」
ぽつり、独り言のようにそう呟いたのが聞こえたけれど、
僕にはなんて返せばいいのかわからなくて、
黙っているしかできなかった。
「…………………ごめん、
やっぱり今日は、先に行ってて?」
この顔じゃ、学校いけないしさ。と蘭はそう言って、
ベッドからするりと抜け出した。
ベッドに乗り出すように座っていた僕の横を通って、洗面所に向かう。
僕はどうしたらいいのかわからなくて、少しの間ぼーっとしていた。
だけどいつまでもそうしているわけにはいかないから、
のろのろと着替えを済ませて部屋を出た。
バタン、と閉まったドアを見つめて、
「ゆきの隣にいたのは、僕なのに…」
そう呟く蘭がいたことなんて、知るはずもなく。
僕は朝のHR中の学校をふらふらと歩いていたのだった。
==第五章 終==
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