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どれぐらい走っただろう
苦しくてその場に座り込んで泣いた
死ぬと言ってもどこでどうやって死ねばいいのかわからない
でも、戻る事は出来ないんだ
真っ暗な歩道に明かりが見えた
車のヘッドライトだろう
仕方なく立ち上がり、また歩き出した
服は何とか着ていたけど、お金は持っていなかった
だからあの車に飛び込んで死のうと思った
ずごく怖いけど、戻るのはもっと怖かった
どんどん近付いてくる明かりを見つめ、歩道に飛び出した
聞こえたのは急ブレーキの音
どうやら死ねなかったらしい
「鹿に注意の看板はあったけど、人間注意の看板はなかったのに」
そう言って車から誰かが降りてきた
きっとこのまま警察に連れて行かれてまたあの家に・・・・・
「怪我はない?」
「どうして・・・・・死なせてくれなかったのっ!」
「どうしてって・・・・君を殺したら俺は刑務所行きでしょ?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
確かに
罪も無い人を殺人者にしてしまう所だった
「帰る家はあるの?」
その質問に首を振った
「お腹空いてる?」
おかしな人
でも、素直に頷いた
「両親は?」
また首を振った
「じゃ、一緒に来る?」
その言葉を聞いて、初めて顔を上げてその人の顔を見つめた
「俺は楓、君は?」
「・・・・・・・・・・・・繭」
「繭、とりあえず何か食べに行こうか」
「僕、お金・・・・」
「いらないよ」
そう言って手を差し出して立たせてくれた
楓は今まで見た事がないような服を着た綺麗な人だった
そして僕にご飯を食べさせてくれたんだ
「よければ話を聞かせて?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「嫌?」
ちゃんと話をしなければここでさよならだと思った
だから僕は・・・・・全て話した
「・・・・・・・・・・・・ごめんね、辛い事を聞いて」
「いえ」
「それなら気にする事はないね、俺の家においで」
「えっ?」
「と言っても家は東京でまだまだ着かないけどね」
「いいんですか?」
「勿論」
そして僕はそのまま車に乗せられて東京へ向かった
車の中で楓は自分の事を話してくれた
職業はギタリストで今日は仕事の下見に来ていたと言っていた
僕にはよくわからないけど、この人はいい人だと思った
その日から僕は楓の家で生活する事になった
毎日が楽しくて幸せだった
楓が有名なギタリストだと言う事も知った
ずっとこの幸せが続くと思っていたある日
「あっ、マネージャーさんこんにちは」
「どうも」
「楓は今練習に」
「今日は君に話があって来たんだ」
「僕に?」
「楓も何を考えているか知らないけど、君は彼にとってマイナスなんだよ」
「えっ?」
「実は、海外デビューの話が来ていてね」
「はい」
「しばらく楓には海外に行って貰うつもりだ」
「えっ?」
「わかるだろ?君は邪魔なんだよ」
「・・・・・・・・・・・・・・・・」
「楓の為を思うのなら今すぐ出て行きなさい」
「でも」
「マスコミはすぐに君達の事を嗅ぎつけて面白おかしく記事にするだろう、だからその前に消えろ」
「でも、僕達はそんな関係では」
「なくてもだ」
「・・・・・・・・・・・・・・・・」
「時間が無い、早くしないか」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「楓の為なんだよ」
楓の為
僕は楓に助けてもらった
だから恩返しをしなければいけない
僕が消えることが恩返しになるのかはわからないけど、僕がここにいてはいけないんだ
だからすごく悲しかったけど、僕は家を出る事にした
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