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赤い宝石
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翌朝、起きれば庭で洗濯物を干しているスアムを見た。
使い魔を使役すればあんなことせずに済むし、なにより自分で魔法を使えばすぐに済むはずだ。
無駄に時間を使っているようにしか見えなくて苛々する。
そんなスアムを見ているこの時間が無駄か、とすぐに着替えて部屋を出た。
食卓へと着けばすぐにタキアが朝食を持ってきた。
この使い魔の鷲のタキアはどうしてオレに仕えたんだろうか、とカメリアは初めて疑問に思った。
使い魔が召喚した者に仕えるのは当たり前だと思っていたのだが、どうやらそうではないらしい。その報告が遠い親戚からあった。
ジッとタキアを見ていると綺麗に整った顔が不安の色を滲ませてきた。
「如何がなさいましたか?」
「…………タキア、お前はなんでオレに仕えた?」
「っ!!…………それは……申し上げなければなりませんか?」
滅多に動揺することのないタキアが動揺しているのを見たカメリアはニヤニヤと怪しい笑みを浮かべる。
「言え」
「………………揺るがぬ芯を持っているところが良いと思いまして、仕えさせていただきました」
予想外な回答を期待していたのだが、想定内だったことに少し落胆する。
「…………皆そう言う」
「長所なのですから喜んでも良いと思いますが」
「………………たまには会いに行くか」
「では、スアム様も一緒に?」
「あれは置いてく」
「良いのですか?」
「なんだ、やけにアイツの肩を持つじゃないか」
「そんなことは……」
「…………ま、行くならアイツが帰ってからか」
「タキアさーん!!」
ガチャリと部屋のドアが開いて噂の当人が現れる。
「あ、カメリアさんおはようございます。タキアさん、洗濯物終わりましたー。次は何をすれば?」
「ありがとうございます。あとはわたしが致しますので、どうぞご自由になさって下さい」
「わかりました、といってもやることないんですよね」
そんなことを言うスアムに向かってカメリアは赤い炎を出して投げた。
投げられたスアムは驚いて急いで逃げたが、その火の玉はスアムを追いかける。
「ちょっ!!なんですか!!どうにかして下さい!!」
逃げ回るスアムを見てカメリアは溜め息をついた。
「やることがない、ね。オレがやった課題が出来ていないようだが?」
「ううう!!やります!!やります!!ごめんなさい!!」
叫ぶスアムを横目で見、火の玉を消したカメリアは食事を再開した。
火の玉が消えて荒く息をつくスアムは恨めしげにカメリアを見た。
「ひどい……はぁっ……悪魔だ…… 」
「悪魔だからな」
「うーっ」
「第一、防御璧なんぞ初歩の初歩だぞ」
「そんなの初めて聞きました!!僕が教わったのは防御璧は一瞬でも出せればいい方だと…………なんですかその目は」
ジトっとカメリアがスアムを見た。
「お前学校行ってるか?」
「行けるわけないじゃないですか!!僕みたいな一般人に……」
学校に行けないということはお金が無いということ。一般人といっても幅広い。
スアムは一般人の中でも下層の方らしい。多分文字もそんなに読めないだろう。
「………………家は」
「自営業ですけど」
「本は読めるか?」
「カメリア様の専門書は読めないですけど、基本的な物ならなんとか」
「ふぅん」
最後に皿の上に残ったブロッコリーをフォークで突き刺し、食べた。絶妙に絡まったドレッシングがブロッコリーの甘味を引き出していて美味しい。
「オレがやった本は?」
「所々なら」
「ならそれで防御璧習得できるな」
コップの中に入った水を飲み干し、席を立ってスアムを見下ろす。
「防御璧できたらご褒美やるよ」
勢いよく顔を上げたスアムが目を輝かせる。
「本当に!?」
「オレは嘘をつかない」
「分かりました!!」
勢いよく立ち上がって部屋を出ていくスアムに、タキアが苦笑した。
「楽しい御方ですね」
「冗談。煩くて適わない」
本当だ。煩くて、仕事集中できない。気になって見に行っては時間の無駄だと書斎に戻るの繰り返し。
なんでもいいから、ここの生活に慣れてしまう前に、スアムを都に返さなくては。
まずは明後日までの仕事を片っぱしから片付けなければならない。面倒だと思いながらも部屋を出て書斎へ向かう。
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