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衝突と思い出
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防御璧が出来ればあとは簡単だ。
物質の変形、固定、衝撃に慣れて学んでいけば、対象が何であれ操れる。
持続は魔力の差だ。
スアムが一生懸命魔法で攻撃するも、カメリアの防御璧に傷ひとつ付かない。
「っはぁ、っはぁ……なんで……」
「今日のおやつも全部オレのものか……」
自分の攻撃の跳ね返りでボロボロになったスアムを見ながら、カメリアは優雅に紅茶を飲んだ。
「ッく!!今日は……あの……幻の……マカロン!!食べたい!!下さい!!」
「お前がオレの防御璧壊せたら思う存分食えるだろうよ」
「鬼!!悪魔!!」
「悪魔だな。ついでに鬼っつーのは東の方の魔界にたくさんいるぞ」
「そんなことっ聞いてない!!」
水を固めて氷にし、カメリアの防御璧へと光の如く速くぶつけるも、呆気なく氷が崩れる。跳ね返ってきた氷がスアムに当たり、頬が少し切れて血が垂れた。
血を見たカメリアは防御璧を解いてスアムに近づき、顎を掴んで横を向かせた。
「下手すぎ」
耳に吹き込むように囁き、頬の切れた部分に口付けると傷が跡も残さずなくなった。
「なっ……なっ……」
後ずさったスアムだが、顎を掴まれてるせいか距離が取れない。真っ赤になった顔が言いたい事を代弁していたので、カメリアは呆れた。
「治癒してやっただけだろうが。色気づくなよ子供のくせに」
「なっ!!子供じゃないです!!それに、色気づいてなんていません!!」
「どうだかな」
「いいから手を離してください!!」
「離したらどうする?」
「あなたを倒してマカロンを食べに行きます」
想定内の回答に、カメリアは手を離した。
すぐに距離を取りながら石を変形させて槍の先端のように鋭くした物で攻撃してきたスアムを一瞥し、背を向けた。
その行動に驚いたスアムは攻撃を少し緩めるも、止めることは出来なかった。
そのままカメリアの背中に突き刺さると思った石が一斉に消えた。少なくともスアムにはそう見えた。
「え?」
「敵を倒すなら、殺す覚悟でいかないとな」
消えた石は、鋭い方をスアムに向け、カメリアの横にあった。間もなくしてスアムの足元に突き刺さる。
すると、地面に亀裂が入り、崩れた。
急なことに驚いたスアムはそのまま落ちていき、再び目を開けた時には赤紫の空に輝く星だけが見えた。
あぁ、なにやってんだろ。
呆けながらも冷静なスアムの思考回路はこの場に来た目的を思い出した。目的は魔法を教わることじゃない。祖父の病気をカメリアに治してもらうことだ。
壁面に足をかけられるぐらいの窪みを作り、ようやく穴から出ると横からきた衝撃に吹きとばされる。地面に転がったところで、上から強い圧力で押し付けられた。風の魔法だろうか。知識の浅いスアムは今自分が押さえ付けているものの正体さえ分からない。
「うぐ…………」
「弱いなぁ、スアム」
隣に立ったカメリアを横目で見ればその赤い瞳の光に、なんとも言えない恐怖がスアムの肌を粟立たせた。
「カメリア様」
タキアの声に、スアムが無意識にタキアを探そうとするけれど圧力でピクリとも動けない。
「お電話です」
カメリアの右手の甲から翠の光が淡く光っていることをタキアが指摘すれば、カメリアは慌てて通話を始めた。
ふっと圧力が無くなったので、起き上がったスアムは、小さな石をカメリアに投げたものの、防御璧で弾かれた。おまけにカメリアの声が近くにいるのに聞こえないので防音式の防御璧だ。
見せつけられた力の差に落ち込んでいると、目の前にマカロンが現れた。マカロンの入った器を持った手を辿れば、タキアが優しい笑みを浮かべていた。
「タキアさん……」
「お疲れ様です。主人が失礼致しました」
「いえ……」
通話を終えたカメリアは、少し考えるように視線を動かした後タキアを見る。
「明日都に行く。大丈夫か?」
「はい。主人の命とあらば仰せのままに」
タキアの返答に満足したカメリアが背を向けて歩き出そうとしたのでスアムは咄嗟に呼び止めた。
「僕のおじいちゃんは!!」
眉間の皺を深く刻んだカメリアは少し考えて、スアムを見据えた。
「見てやらんこともない、が保証はしない」
嬉さが胸を占めて舞い上がっているスアムを余所に、カメリアはタキアにスアムの服を頼んだ。
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