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学校
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ようやくやってきた学校。初めての学校。不安と楽しみが混ざりあって複雑な気分だ。
「楽しみ?」
「え、あぁ……まぁ……」
「不安?」
「そうだね……」
「大丈夫。皆優しいから」
今からスアムが通うのはハンプディスト学園。中央区にあり、魔王城に最も近い学校だ。系統としては悪魔族が多く所属する学園になる。
人はともかく大学部に入った瞬間同じような扉がずらりと並び、同じような階段が登る度に現れた。
ベストルド邸でさえ迷うのに学園もこれでは確実に迷うだろう。
そうスアムは確信した。
「カロエ、道、どうやって覚えればいい?」
「え?ああ、自分で数える、とか?あんまり気にしたことないなぁ」
「不便じゃないのか?」
「うーん、あっ!その階ごとの部屋のプレートで覚えたなぁ」
「プレート……」
確かに階段から見えるプレートがあるが、部屋番号と階数がバラバラだ。覚えるにしても、3号室が二階、1号室が五階、4号室が一階など覚えずらいにも程がある。
「あと、手っ取り早いのは使い魔かな。空間把握能力が高いから」
「へぇ」
「はい、ここ。着いたよ」
三階の一番右の部屋はドアノブを回して開ける型だった。他の部屋は全てスライド式なのに、この部屋だけは違っていた。
ノックして開いた先は、教室というより診察室のように見えた。
椅子やテーブルは病院や医務室にあるようなそれで、近くに簡易ベッドがある。ホワイトボードで部屋は半分に分けられていて、奥は応接室のようになっていた。
「アオル様」
カロエが誰もいない部屋に声をかけると、奥の応接室の壁にあったドアから紺色の髪に一本のアホ毛がチャームポイントの黒い瞳の男性が一人出てきた。
「なんだ、カロエか。どうした?子供でも産んだか?」
「う、産んでませんよっ!!」
カロエは、これでも男だ。間違っても子供なんて産まないだろう。嫌がらせにも程があると思っていると、アオルと呼ばれた悪魔の後ろからわらわらと子供たちが出てきた。
「こーら、奥で待ってろって言っただろ」
「とー様、お客様、困らせちゃ、めっ、なんですよ」
「ですよー」
「あー、お前らが愛しのイオスに似るのはいいが……うーん……許して?」
「だめですー」
「ですー」
「じゃあ、好きなもの買ってやるから許して?」
すると子供たちはパッと顔を輝かせ、各々に欲しいものを告げた。
「そんなに多いんじゃ買わない」
言われた子供たちは円になって話し合い、ひとつだけを告げる。すると、一人が嫌だと駄々をこね、それにつられて二人三人と駄々をこね始める。それを宥めながらアオルがこちらへと向く。
「で、何の御用で?」
「スアムが学校に通うので困った事があったら助けて頂きたいと思いまして」
「全然オッケー。つか、使い魔いないの?」
「アオル様、些か失礼かと……」
困った顔でカロエが告げた。
使い魔を従えているのが普通なのだろうか?でもそれだったらカロエが失礼だという意味が分からない。
「悪い悪い。なんなら今日中に図書館でも行って使い魔召喚出来るかどうかでも試してみたらいいんじゃないか?早いに越したことはないだろう」
「そうですね」
まったく会話についていけない。
「アオル。簡単に言うものじゃないよ」
気配なくアオルの後ろに現れたのは、黒髪に魔王と同じ翡翠の瞳、アオルと同じくアホ毛が一本揺れている服装が身軽そうな男性。彼を見たアオルは嬉しそうに顔を寄せ、頬にキスをした。
「おかえり、イオス。会議お疲れ様」
「アオルはこれから講義だよね?早く行ってきて」
「はいはーい」
名残惜しげにもう一度イオスの頬にキスをしたアオルはカロエとスアムに手を振ってその場からいなくなった。正確には移動魔法の使用だ。
部屋にいた子供たちがイオスの下へと来て、口々におかえりなさいと告げた。
「ただいま、みんな」
ひとりひとりの頭を撫でて、カロエとスアムにソファーを勧める。
「お茶いる?」
「いえ、結構です。すぐに行きますので」
「そう。あ、自己紹介しなくちゃね。僕は悪魔系現頭首のイオス・レスファイアです」
「スアム・タリズです……」
悪魔系現頭首とは庶民のスアムでも知っていて当たり前の存在。魔王のすぐ下の地位にあり、各種族の頂点とも呼べる御方々。
悪魔系といえば魔界において最も多い種族だ。その中の頂点とは、魔力が桁違いな上に聡明。
今目の前にいるイオスは巨漢とは真逆で、身長もあまりないし、細身。可愛らしい顔をしているのでとても現頭首とは思えない。
じっと見ていると、イオスはくすくす笑った。
「信じられないって顔してる」
「えっあっ、すいません……」
「いいよ。慣れてるから。」
「あの……レスファイアって……」
「あぁ、昨日は家に戻らなかったからね。僕はベストルド家三男。グレンの兄だよ。ベストルド家の純血悪魔はレスファイアを名乗るんだ」
純血悪魔は黒髪に黒い瞳なのでは?と首を傾げると、イオスは微笑んだ。
「僕やクレスの翡翠の瞳はもともとの魔力が多いことの証拠。稀に生まれてくるらしいんだけど、兄弟で翡翠ってラクスお父様もすごいよね」
お……お父様?
「え……ラクスさんって……男?」
「ん?知らなかったの?」
「え……じゃあ、魔王様を産んだのは?」
「ラクスお父様」
「え!?」
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