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飴色のガラス
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「取り敢えず話は以上だ。行くぞ」
立ち上がったカメリア様の後についていき、奥の部屋から出るとエクア准教授がニッコリと笑って立っていた。
「まさか、何もしないで帰すわけないって分かってるよね?流石にオレだけの見解じゃ不備があるだろうし、見直してもらいたいんだけど?」
「…………はぁ。スアムは帰れ」
「あ、オレ的にはかわいこちゃんがいてくれると嬉しいなぁ」
「スアム」
「あー、ほら。そんな怖い声出すと怯えちゃうだろ」
「お前は黙ってろ。見るほどのことは無いから時間は有効的に」
「そういうこと言っちゃって。見られるのが恥ずかしいんだろ」
「あ?そんなわけないだろうが」
「じゃあ、いいじゃん。ね、見たいよね?カメリアの教授姿」
きっとカッコイイのだろう。ものすごく見たくて何度も頷くと、カメリア様が諦めたように生徒達の方へ向かっていった。
エクア准教授といえば、僕の隣に座った。その事にカメリア様がこちらを睨むがエクア准教授はなんのその。
「ねぇねぇ、かわいこちゃん」
「スアムです」
「かわいこちゃんはどうやってカメリアと出会ったの?」
「北の岩山に登ったからですよ」
「願いを叶えに?」
「はい。結局叶わなかったですけど」
「そりゃそうだ。カメリアは何でもできる奴じゃない。出来ないことだって沢山ある」
「はい」
「で?」
「はい?」
「続き」
「今、カメリア様が僕をこの学園に通わせてくださってます」
「…………岩山で何も無かったの?」
「?……死にそうな程の防御訓練だけはさせられましたけど?」
「……マジか……大切にされてんのな」
「?、はい」
話しているうちにエクア准教授が距離を詰めてきていたせいか、腕が僕の肩に触れそうな位置にあった。
それを見たカメリア様が眦を上げて戻ってくる。
「おい、エクア。離れろ」
「いーじゃーん。もっとかわいこちゃんと話させてよー」
ぎゅうっと抱きしめられて、硬直した。
見た目の線は細いのに、抱きしめられると意外と鍛えられているのが分かる。少し、触って確認してもいいだろうかと聞こうとしたらカメリア様に無理矢理引き剥がされた。
「次やったらただじゃ済まさねぇからな」
「おー、怖い怖い」
怒気を含んだ声に肩をすくめるエクア。
そんなやり取りをしていると、生徒の方から、質問が投げかけられた。
面倒くさげに戻るカメリア様の手は僕の手を離さずに、生徒達の元へと戻った。
見知らぬ生徒達の視線が痛くて視線を落とす。
「スアムも聞いておけ」
黒い机の上に置かれたレポートには、防御魔法に組み込む魔法の種類、方法、活用法などあらゆる場面で使えることを提題としていた。
「防御魔法にも様々あるが、組み込む魔法との相性を如何に良くするか、は個人の技術によって異なる。皆等しく使える数値を割り出すのは重要なことだ。中等部にでも行けば組み合わせ魔法の授業があるだろう。その時に調査しろ。安全なのは火、水、木、金、土の五属性に限るが、少々リスクが有りうる光と闇については実習の教授の方々に頼むこと。数値が出ればそれについての平均共に限界を割り出すこと。そうすればあとはいくらでも書けるだろ」
「組み合わせ?」
「防御している状態で、他の魔法を防御の表面に張り巡らせる。そうすれば、攻撃された時の衝撃の相殺とか、跳ね返したりとかできる」
生徒のひとりが説明してくれて、関心していると、普通は使えないけどね、とエクア准教授が補足した。なんでと問う前に答えを口にしてくれた。
「防御している状態っていうのは常に魔力を使っていることになる。その上で使う魔法っていうのは攻撃魔法に類するものだけ。なら、防御しながらの攻撃をする状態と同じことを示してるんだけど、普通の……この学園に通っている生徒の大半はそんな状態長くは持たない。もしくは出来ないんだ。だから、より魔力が高い者達ができる魔法の括りになってしまう。それを一般化するんだから、魔力を削らず且つ効果的、更にはそれを踏まえた戦闘陣形が出来たらいいね」
なんだか凄いことをしていると漠然と思ってしまう僕は薄情なのだろうか。
そんなこと、できる者だけがやればいい。出来ないなら出来ないなりに違うことをしたらいい。
キュッと口を引き締めると、カメリア様に頬を抓られた。
「心ん中丸聞こえ」
「ふぇ?」
「魔力が高い者が多いわけでもない。戦闘において、その魔力が高い者達が全員倒れたらどうする?自分の身は自分で守るしかないんだ。少しでも出来ることは増やしておいた方がいい。お前は魔力が高いが、オレやベストルド邸の者に勝ったことはないだろう?力で適わないなら技術を磨く。当然のことだ。なのに、最初から出来ないと言って逃げるのは唯の臆病者だ」
鋭いカメリア様の瞳に何も言えなくなる。
「はいはい。イチャつくのは他所でやってね」
頬から指が離れ、頭をぽんぽんとカメリア様に撫でられた。
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