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ベールの向こう側
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「じゃ、オレは帰る」
「えっ、あっ!!まだやることが!!」
カメリア様を捕まえようとしたエクア准教授の手が空を切る。
カメリア様に抱き寄せられていたせいか、僕も一緒に空間移動魔法でベストルド邸についた。
「カメリア様……」
「じゃあ、あとは頑張れよ」
「ま、待ってください!」
ぎゅうっと抱きつくと、カメリア様は少し焦ったように足を少し引いたが、やがて溜息をついた。
「おい、見せもんじゃねーぞ」
ベストルド邸の入口から数名ぞろぞろと出てくる。
「いや、出ていったらお邪魔かな?って」
「カメリア様の慌てた顔って珍しくて」
「スアムがいるなら今度のパーティー招待しても大丈夫ですね」
「イチャつくなら自宅でやって下さい」
「なんか微笑ましいですね」
「いやー、やっとカメリア様にも春ですかー」
ふるふると震えたカメリア様が皆を見て、テメェら黙れ、と一言放った。
「あっちの方も教えた方がいいですか?」
「余計なことするな!!」
「あ、初が好きなんですねー?」
「五月蝿い」
頭上で交わされた会話の意味がわからない。一人置いていかれたようにポカンとしていると、黒髪に紫の瞳を持った優しそうな悪魔が、昔のラクスみたいだな、とクスクス笑った。
「えええ?そうかなぁ?」
ラクス様が苦笑いをして、隣の悪魔を見る。
「自分じゃ分からないだろ」
自然な流れで抱き寄せ、髪に口づけを落とす行為がひどくキザだがしっくりきていて、物語のワンシーンを見ているようだ。
「リハル父様。控えてください」
「ん?なにを?」
溜息をついたトルン様が手持ち無沙汰に腕組みをした。
「そういえば、カメリア様。何故ベストルド邸なんですか?」
カメリア様の地位ならば協力する貴族なら沢山いそうなものだ。
「…………親戚だからな。オレはリハルの叔父に当たる」
「なるほど……」
「わかったらさっさと離れろ」
「え?……あ、すいません」
すっかり自分のことを忘れていた。けれどそれと同時になぜカメリア様を捕らえていたのかをも思い出す。
「もう少し、お話しましょう!」
「嫌だ。帰る。元気でな」
半目でそう告げたカメリア様が僕をはがそうと頭を押してくるが、僕は僕で手を離さなかった。
「観念したらどうです?話し合って分かることもあるかもしれませんよ、カメリア叔父様」
「…………まだ、いい」
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