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裏任務
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招待客が全員揃ったのか、奥のドアから家主のカロニカ様とフローラ様が現れた。
軽く挨拶を述べ、乾杯をした。
曲が流れ始め、皆それぞれ話したり軽食をつまんだりと楽しく過ごしていると、ダンスの時間が始まり、公爵位の方々が踊り始める。
さすがベテランというべきか、初心者の自分があの中に混ざったら赤っ恥だ。
誘われぬよう壁の花を決め込んでいると、リアス様がいないことに気がついた。更にイクルもいない。
トイレでも行ったのだろうかと思いながら会場入口を見ているとリアス様が戻ってきて、今度はイオス様が会場を出た。
暫くしてイクルが会場に戻ってきて、今度はリハル様が会場を出た。
自然なようで自然ではない動き。
ひたすら会場の出口を見ていると、突然目の前が真っ暗になった。
「失礼。一緒に踊って頂けませんか?」
聞かれた言葉に、拒否の言葉を告げようとして相手を見ると、赤みがかった黒髪に紅色の瞳と目が合った。
「ぐ、グレン様!?」
「あぁ」
「え、えとっ……」
「可愛らしい人。一緒に踊って頂けませんか?」
片手を取って口付けられ、突然のことに思考が絡まりながらも、喜んで、と返事を返した。
グレン様に手を引かれ、ダンスを踊る人達の中へと連れ込まれた。自然な流れで踊り始めるも、緊張しすぎてなかなか上手く踊れない。
そんなスアムを見て、グレンはクスリと笑った。
「肩の力を抜いて」
「はっ、はい……」
「それから、ステップはオレがリードするから考えなくていいよ」
言われた通りにすると、足が絡まることもなくすんなりと踊れた。
「使い魔とは話してる?」
「し、してないです」
正直それどころじゃない。たまに向こうから現れることがあるが、忙しすぎて相手にしていなかった。
「いざと言う時のコンビネーションが大切だ。よく話し合うといい」
「はいっ」
笑顔で答えると、一曲終わったので、グレン様にお辞儀をして壁の方へと戻ろうとしたが、次々と声をかけられてしまい、断ることも出来ずに踊り始める。
ようやく解放され、テラスへ行くと、濃紺の空が広がる。星が綺麗に散っていて、自分が持つグラスの中の液体に映り込んでいた。
「はぁ……」
疲れた。すっかりカロエと離れてしまったし。
グラスの中身をちびちびと飲んでいると、隣に誰か来た。
「今晩は」
「こ、こんばんわ……」
紳士服に身を包んだ悪魔がニッコリと微笑んできて、どこの人物なんだろうかと思いながら笑みを返す。
「先ほど踊りを拝見させて頂きました」
「こんな未熟者の踊りなど……」
「いえ。可愛らしいダンスでしたよ」
そう言われてもなんだか嬉しくない。
きゅっとグラスを握ると、スッと肩を組まれたので抵抗として手のひらで押すが、離れてくれない。
「あ、あのっ」
「今宵は私と一緒に」
「あ、のっ、離してくださいっ」
けれど肩を掴む手がより一層強くなって顔を顰めると、僕の肩を組んできていた悪魔の腕を横からすごい強さで掴んで引き剥がされて、僕は内心ホッとする。
「てめぇ、誰のもんに手ぇ出そうとしてんだ?」
あまりにもこの場に似つかわしくない口調に紳士服を着た悪魔は不機嫌な顔をする。
スアムはしっかりと正装をしたカメリアを見て、ぽかんと突っ立った。
紳士服を着た悪魔が腕を振り払って逃げようとするが、カメリアは手を離さずに、掴んでいる腕を軸にグリッと回した。あまりの痛さに悲鳴をあげる悪魔だが、会場にいる者達は誰ひとりとしてこちらを振り向かなかった。
消音のバリアだ。
悪魔をきっちりと拘束したカメリアが荒々しく右手の甲に向かって話す。
「こちらカメリア。東のテラスで犯人確保。至急引渡し願います」
そうして数秒も経たないうちにリハルがやって来た。
「ご苦労様です」
「おい、リハル。今度スアムを囮に使ったら許さないからな」
「おや?出るタイミング計ってた貴方がいいますか?あわよくば会わずに帰ろうともしたのに?」
「余計なお世話だ」
「スアムにとって初めてのパーティーなんですから、ちゃんと最後までエスコートしないと」
「うるさい。さっさとコイツを引き取れ」
「はいはい」
不機嫌が頂点に達しているカメリアから悪魔を受け取ったリハルはごゆっくりと声をかけて去っていった。
「カメリア様」
綺麗な赤い瞳がスアムを射抜く。けれどすぐ逸れてしまった。
「そのドレス、リフラだろう?」
「はい」
「お前はもう少し自分の色気に自覚を持て」
「い、色気なんてっ」
ぐっと抱き寄せられ、カメリアの存在が近くなる。
「こんな背中も肩も出して何言ってんだか」
つぅっと背中を指で辿られビクリと体が跳ねる。
「っ、カメリア様っ」
「エロい顔して、どうした?」
「えっ、エロくないですっ」
「いろんな奴と踊っていたな」
「こ、断れなくて」
「この、浮気者」
「そんな…………」
「お前はオレだけ見てればいいんだよ」
「カメリア様……。じゃあ、一緒にいて下さい」
「お前がオレのところに来い」
「遠いです」
「やるべき事をしてからだな」
しゅんと落ち込むスアムの前髪を上げたカメリアは額に軽くキスをした。
「待ってる」
「っ!はいっ」
「にしても、リフラのやつ…………」
晒された肩や背中を撫でたカメリアは、その手を胸へと移動させた。
「え、カメリア様っ!?……っちょ、んっ……」
「感じる?」
耳元で囁かれ、ぞくぞくっと体中が痺れたみたいに駆け巡る。
「っん、んっ……ふっ、ぁ」
「エロい声出してどうした?」
首を舐められ、カメリア様の服を握る。
「かっカメ……リア……様っ」
羞恥で顔が赤くなり、頭が沸騰するくらいに慌てていた。
「あっ、もっ、やぁっ……」
「いや?いやか。ならもうやらない」
「あ…………カメリア……様……」
「さ、行くぞ?どうした?」
「その……」
「あの程度で腰が抜けたか?」
「そ、そんな訳ありませんっ!!」
「なら、一曲、踊って頂けませんか?」
左手を取られ、カメリア様から頂いたブレスがキラリと光る。
恭しく手の甲にキスをされ、優しい笑みで見つめられた。
「……喜んで」
心がざわざわする。嬉しくて、嬉しくて、ずっとこんな瞬間が続けばいいなと願ってしまうような、幸せな時間。
今すぐ抱きつきたいけれど、今からダンスだ。カメリア様に失望されないように猛特訓したダンスの見せ所だ。こんな時ばかり自分の器用さに感謝した。
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