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ツインレイ
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グレン様と協力をしながらトルン様を納得させ、色々な形でリアス様との仲を回復させようとしているのだが全く解消されていないのが現状であるまま二人の誕生日を迎えてしまった。
立っていればじんわりと汗が滲んでくる初夏だ。
魔界の気温は人間界に行った時に支障がないよう同じように設定されている。四季を操るのは悪魔系、死神系、魔獣系、妖系の四大魔系の頭首の方々だ。
慣れない暑さで少々へばっていると涼しい顔をしたカロエがこちらをじっと見た後、何かを悟ったような顔をして耳打ちした。
「気温を操る魔法教えてあげる」
「…………そんなのあるの!?」
気温を操る魔法なんて初めて知った。
「自分の周りだけね。水を操るのと原理は同じ。結構魔力消費するから学校の皆はやらないけど……スアムくらい魔力があるなら多少操ってたってそんなに疲れないはずだよ」
「なんで早く教えてくれなかったのさ……」
「え?だって今まで知らないとは思ってなかったから……」
知識の差か。ベストルド邸にいる皆は博識だと思う。学校なんか通わなくても邸にいるだけで充分教養が身につくと思う。
「ええっと……自分の周りだけ操る……」
「そうそう。空気を循環させて、魔力で少し冷たくして……」
「あー、涼しい……」
「やっぱりスアムは器用だね。涼しいのもいいけど風邪ひかないように気をつけてね」
「はーい」
今日は久々に特訓がない日。というのもリアス様がトルン様とデートする日だからだ。トルン様が今日までいろいろリアス様の御機嫌伺いと謝罪を繰り返した末に今日だけは一日デートしてやると許可が出たのだ。
今日こそ勝負の日である。
「夕飯いる?」
「んー、大丈夫。ルーと外で食べてくる。ありがとう、ラクス父様」
「…………本当はもう許してるんでしょ?」
「どうかな。ルーの反省次第」
「あんまり虐めないでよ」
「…………虐めてないよ。躾てるんだ」
「スアムが心配してる」
自分の名前が出てドキッとして気配を消して曲がり角の影でそっと二人の話を聞く。
「…………優しいよね。甘いとも言うけど。でも少し羨ましいよ」
「…………リアスも、優しいよ。だって僕の子なんだから」
「そうだね父様の息子として恥さらしにならないように頑張るよ」
「そこまで言ってないのに、もう……」
コツコツとこちらとは反対側の通路からバッチリキメたトルン様が現れる。
「じゃあ父様、行ってきます」
「ん。二人とも行ってらっしゃい。気をつけてね」
リアス様の腰にサラリと回ったトルン様の手は見事に叩き落とされていたが、二人の背中をラクス様は微笑ましく見送っていた。
「ラクス様……」
「わっ、びっくりした。なんだスアムかぁ」
「驚かせてすいません……」
「大丈夫だよ」
「二人は大丈夫ですかね?」
「大丈夫って?スアムが心配してることはもうとっくに解決済みだよ。ただリアスが気持ちの鍵を開けようとしないだけ。本人は躾だって言ってたから、今日にでも開けるんじゃないかな」
さすが親御様だ。よくわかっていらっしゃる。でもじゃあ、僕らの努力はいったいなんだったのか……。
「ふふ。顔がムッとしてるよ。リアスはツンデレだから。何かきっかけがないと素直になれないんだよ。皆が諦めないで一生懸命リアスとトルンを会わせてたからご褒美という理由で今日行ける。本当はトルンに誰かが近づく度にハラハラしてたのにね」
「ハラハラ?」
「うん。可愛いでしょ?」
ハラハラとはどういうことだ?
「スアムはカメリア様を呼ばないの?」
「えっ?」
「いつでも呼ぶといいって言われなかった?」
「い、言われましたけど。カメリア様にも仕事があるわけで、おいそれと岩山から離れるわけにもいかないでしょうし」
「離れるくらい大丈夫だよ。それに……今頃カメリア様もハラハラしてるだろうから」
ハラハラ?あの方が?あり得ない。鋼の心でも持ってるんじゃないかと言わんばかりの……。
そこまで考えて、照れたような顔やムッとした顔が思い浮かんで、鋼の心ではないか、と結果が出る。
「今度機会があったら呼んでみます」
「あ、その時の用事が終わったら呼んで欲しいな」
「はい。わかりました」
にこやかにラクス様と別れて、リアス様たちの後を追いかけようと屋敷を出るとグレン様に捕まった。
追わなくていいそうだ。
「トルン兄様もそこまで馬鹿じゃないし、リアス兄様もそこまで鬼じゃない。スアムの考えているようなことは起きないと思うから大丈夫だきっと」
「そうですか……先程ラクス様とお話したのですが、リアス様がハラハラしながらトルン様を見てたと……」
「ハラハラ?」
「トルン様に誰かが近づくたびにハラハラ……」
「くくくっ……まあ、そうだよなあ。でもどこから見てたんだか。リアス兄様の予想外もトルン兄様だから。まあ、どっちもどっち。結局最後はくっつくから慌てたオレ達が疲れたな」
「やっぱり余計なことでしたか?」
「まさか。オレ達がいつもの事って放っておいて長引くより、スアムが大変だっていって走り回って今回のように早期解決、っていうほうが断然いいだろう。ありがとうな、スアム」
くしゃくしゃと頭を撫でられた。その感覚に懐かしいものがじわりと込み上げる。
頭を撫でられながら目だけグレン様を見ると、どうした?と首を傾げられた。
「なんだかお父さんみたいです」
「そりゃ、オレには息子も孫もいるし、父親の立場は弁えているつもりだが」
「……嬉しいです」
「そりゃ良かった」
へにゃっと笑ったグレン様は手を退いてじゃあなと去っていってしまった。
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