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屋敷の散策
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さて、今日は何をしようか。
リアス様達の尾行はグレン様に止められてしまったし、学校は休みだし、特訓も休みだ。
やっぱりリアス様達の尾行をしようか。
ぼんやりと屋敷を歩いていると曲がり角でぼふっと誰かにぶつかった。
「ご、ごめんなさい」
「いや、こちらこそ悪いね」
顔を見ると、黒い髪に黒い瞳の純血悪魔が立っていた。見たことない顔だが、知っている気がする。誰だったろうか。
「私の顔に何かついているかな?」
「あっ、いえっ。ごめんなさいっ」
いつの間にかまじまじと見てしまっていたらしい。
すごい勢いで頭を下げるとくすくす笑われた。
「目が赤いからグレンの子かと思ったけど、どうやらそうじゃなさそうだ」
「ぼ、僕なんかがグレン様の御子なんて恐れ多いです」
「では君は……」
「いた!!もう!!フブキ兄様!すぐに居なくならないでください」
声を遮るようにラクス様の声が廊下に響いた。
「ごめんごめん。庭園に行ってたんだ」
「気に入った花でもありましたか?」
「一輪目の前に」
「カメリア様がお怒りになられますよ」
「はっはっは。カメリアが怒るのか。それは怖い。でもお近付きの印にこれをどうぞ」
菱形のペンダントを貰った。魔法道具だ。真ん中に青い石が嵌っているので水の系統の補助が主だろう。
「ありがとうございます」
「で、リルバの教育の件は?」
「リアスが外出中なので後ほど。それよりお父様のことですが……」
フブキ様とラクス様が軽く会釈をして行ってしまった。
さて、ペンダントを自室の箱の中にしまい、アデアを呼ぼうと思ったが、あれはあれでうるさすぎるのでやめた。
屋敷の中を散策して見ようと歩き始めた。
広い屋敷にも関わらず綺麗な屋敷だ。塵一つ落ちていない。
バタバタと走り回って遊んでいるのは滑らかな銀色の髪をした黒い瞳の悪魔と髪と瞳が銀色の銀狼の子供たちである。
確か以前、外で遊びなさいとロキ様に怒られていたのを見たことがある。
中ほどまで来ると子供たちの声がした。イオス様が子供たちを引き連れて中庭で遊んでいた。傍にはアオル様の姿がある。
もっと奥へ進むと静かになった。確かここら辺はリハル様の寝室だ。静かなのも頷ける。
庭園の方へ行くと、デルフィニウムが咲いていた。
綺麗な青だ。香りも良い。そういえばカメリア様の庭園にはなかったはずだ。機会があったら少し分けてもらおう。
生垣の迷路のような道を進んでいくと一輪の見事なバラが咲いていた。
一輪だけ?と首を傾げていると、後ろから手が伸びてそのバラを手折った。振り返ると、綺麗な赤い長髪と赤い瞳を持った眼鏡をかけた死神が艶やかに微笑んでいた。
「見ない顔だね。君は……スアム・タリズかな?」
「はい……」
「ふふ。名前は最大の戒めだ。カメリア様に教わらなかったかい?」
何が言いたいのだろうかと思っていると、一瞬呆れた顔をされた。
「覚えておくといい。自分の名前は時に戒めともなる。自分が知らないのに相手は知っているこの状況は、相手より不利であると考えて良いだろう」
成程と頭に刻んでおく。同時に先生みたいだとも思った。
「分かりました」
「素直で宜しい。私の伴侶のアシスや子供たちがお世話になってるお礼として名乗りましょう。私の名前はスピア・レフォルト。よろしくお願いします」
レフォルトの姓ならばアオル様の家系だったはずだ。いや、それよりも伴侶があのアシス様だということに驚きだ。
「よ、よろしくお願いします……。アシス様が……その……」
聞きたいことがありすぎて言葉に詰まる僕を見て彼はクスクスと笑った。
「随分、アシスに好かれているようで?」
「い、いえっ、どちらかというと嫌われてるような気がします。クレス様と話している時とか……もう空気が重くなって……」
「ああ……アシスにとってクレスは数少ない理解者だからでしょう。取られまいと必死なんです」
そんな所が可愛いんだと言わんばかりの口調で微笑むスピア様の横に、稲妻の走る槍のような鉄製の武器が突き刺さった。突き刺さる角度から飛んできた方向を見ると、アシス様が最高に不機嫌な顔で窓辺に頬杖をついてこちらを見ていた。
「今日は機嫌がいいですね……いや、君を結構気に入ってるのかな?」
明らかに不機嫌な顔なのに機嫌がいいという。一体どこでそんな表情を読み取っているのか聞きたい。
「気に入ってるって……逆に嫌われてますけど僕……」
「アシスはシャイだからね」
会話が終わらないと見るや稲妻の走る鉄の武器がもう一本僕の横に突き刺さった。本当にギリギリの位置だ。この所業に対してシャイの一言で済ますスピア様がすごいと思う。
「さて、そろそろ行かないと君が死んでしまう。ということでまた会えたらその時はよろしく」
「はいっ」
踵を返して去るスピア様にぺこりと頭を下げると、もう一本稲妻の武器が僕の横に突き刺さった……。
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