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歌の2。後ろの山に棄てましょか
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後ろの山に棄てましょか
「ギャアッ!ギャギャ!」
「うわっ!烏が!」
バイト先に急ぐ鬼足の前を飛ぶ烏
「あっぶね!」
空を見上げ
飛んでいく烏を眺める
「そういえば美幸は元気かな?」
隣町の神社の娘で
年上の元彼女
「新しい彼氏が出来たから連絡はしちゃいけないけど」
LINEの神主装束を見てため息をつく
「俺って神職フェチなのかな?」
同じく水色の袴姿の元弥の写真
「お前銭ゲバで女装趣味でコスプレマニアかー!ドン引くわー!」
「うっせーよ!」
京介にからかわれ
怒鳴る鬼足の手の中
元弥の写真が消えていった
烏骨村
「そういえば巫女さん。あんたの両目」
以前は抉られた右目を覆う眼帯のみだったが
今は両目を布で覆っていた
「まさか両目を抉られ…?」
「いや、左目も視力が落ちて光が辛くなった」
「そうか。大変だな」
「同情は要らない。両目が見えなくてもあのタコをぶん殴れる」
元気良く杖を振り回す巫女に
「元気だねー」
「おっかない巫女さんですね」
誠史と蒼太が感想を述べる
「おい!幸!」
「ん?幸って誰?」
いきなり違う名前で呼ばれ
幸一はあせる
「お前だろ…幸一」
怪訝な表情を見せる剛志に
「何お前ボケたの?」
蒼太がからかう
「恩師に向かってお前ってなんだ!ついでにボケて無い!」
「どうでも良いからこの人達の説明をしてくれ」
「あ、ああ…烏骨村の巫女さんと…被害者の皆さん?」
「おしい!サンドバッグです」
バキッ
ドカッ
どごぉっ
「俺は烏骨村の巫女でこのマヌケ共は愉快な村人だ。このクソセンセイに弟の片割れの世話を任されている」
「…はあ…」
「な?」
「うん。幸もボコボコだね」
「それよりそこの人達の説明も頼む。始めて会うからな」
「ああ。鳥井村の人間で幼馴染みと元教え子」
「鳥飼剛志です」
「鳥山誠史です」
「鬼道蒼太です」
「ん?きどう…?」
蒼太の名前を聞いた巫女が眉を潜める
「どうしたの?顔が見える?あなたに良く似ています。あっちの方が優しそう」
ゴンッ
「そうでもないぞ」
ゴンッ
「「あいったぁーっ!」」
それぞれの巫女が二人を殴り
「鬼導か…その名字は封じさせてもらう。うちの神は鬼を嫌うからな。あんたの事は蒼太さんで良いかな?」
「あ、はい。蒼太で良いですよ」
「名前を封じられると言うことを理解していないのか。可愛い巫女だ」
「こちらです」
村人に案内され
旅館の部屋に案内される
「見た目が古くて不安だったけど中身はバリアフリーだね」
スロープや手すりの付いた館内
点字や音声付きのパネル
「元元は巫女さんの為にね。お客さんも来るから改造もした」
「ありがとうございます。えっと…」
「猿渡(さるわたり)です」
「猿渡さん。以前俺が会った人達は居なくなったのですか?」
鳥井村の人間に似た声の男達の姿が居らず
目の前の猿渡も聞いたことの無い声で
「へ?居ますよ?俺はあなたの膝枕も努めたし。巫女さんに何度も殴られている。それと…」
こちらを睨む男
「あそこに居るのもあなたに出会ってる」
「知り合いに似ていると思ったんだが」
「あのタコの仕業じゃない?」
「タコ?」
「あなたの弟」
「ああ、神様」
「神様は花嫁が寂しがらないように知り合いに似せてくれるんだ」
「ふうん」
しばらくして部屋につく
「こっちが洋室でこっちが和室ね」
「折角旅館に来たのに…」
洋室に通された蒼太が不満そうな声を上げる
「和室だと立ち上がる時に大変でしょう?うちの鬼…じゃなかった巫女さんもベッドで寝起きしているよ」
「俺もベッドですが…旅館って言ったら畳で布団で、椿の花の入った花瓶」
「ああ、花がポトンて落ちるあれ。風情があるよね」
「お前は年はいくつだ…わがままを言って猿渡さんを困らせるな」
「折角の旅行なのに~!」
幸一が叱るも不満を口にしていたが
「旅館の楽しみは和室だけじゃないから。我慢しようか」
誠史に優しく諭され
「はい…」
「それに俺は蒼太の浴衣姿が見られるなら洋室も大好き」
「お前はそれだけだな」
「はは…それと風呂は大浴場と部屋に家族風呂があり、どちらもバリアフリーです。ただ、風呂でエッチはやめてね。他の人も入るから」
「「「えーっ!」」」
幸一以外の全員が不満の声を上げる
「息ぴったり。てか不衛生だよ」
「いつもと違う、しかも温泉でのエッチを楽しみにしていたのに…」
「泣かないで蒼太」
俯いた蒼太を誠史が慰める
「泣いてないぞそいつ」
幸一が呆れた様子で見つめる
「ああ、泣かないで。家族風呂は大丈夫だから」
猿渡は信じたようで
「やっぱり誠史だこいつ」
「先生達が泊まる和室はこの隣ね。部屋や冷蔵庫に置いてある飲み物はウエルカムドリンクです。お好きにどうぞ」
去っていこうとする猿渡に
「すみません。あの一斗樽は?」
「ウエルカムドリンク。一人1個ずつ」
「あの…俺達はあいつみたいに飲みません」
「あ、そうなの?おーい!ザルは一人だけだって!普通の用意して!」
「俺は下戸です。ついでにこいつは穴の空いたザルです」
「恩師に向かってこいつとはなんだ!こいつとは!」
「うっせー奴等だ…」
酒樽を片付けながら男が呟く
「どうせ片付けるなら花嫁以外も片付ければいいのに…」
カツン
「ひっ!」
文句を言っていた男の耳に杖の音が響く
「驚いた?」
木の棒を持った少年が笑う
「驚かさないでください!心臓が止まるわ!」
「お客さんが来たと兄貴から聞いたから」
「ああ、はい。あのセンセイと愉快な仲間達」
「ふうん…」
少年の瞳が鋭く光る
「俺は兄貴に似た人の隣にいる人が好みだな」
少年が棒切れを指した先
蒼太に笑いかける誠史
「兄貴に頼んだらいいのかな?」
「あの二人は恋人同士みたいですよ」
「だから?」
「…お兄様に聞いてみてください、宮司」
「はぁー!気持ちいい!」
大浴場
温泉に浸かりため息をつく
「やっぱ温泉はいいわー!」
「おっさんかお前!」
幸一が呆れた様子で蒼太を見つめる
「最近また足が痛いから湯治をしたかったんです」
「大丈夫?そんなに無理をしてたの?」
誠史が心配そうに見る
「気温の変化だ」
目を閉じたままの巫女が少年に手を引かれ巫女が現れる
「同席しても宜しいですか?」
「あ、はい」
少年に聞かれ
間を空ける
「もしかして君にも出会った?」
「はい。烏骨村の神社の宮司をしています」
「え…」
絶句した幸一に
「今ならどちらが兄か分かるでしょう?」
妖艶に微笑む
「何かエロい…」
白い肌に濡れた黒髪
ほんのりと色付いた唇
長い睫毛の下の瞳が艶かしく輝く
「言っとくが俺の弟に手を出したら股間にぶら下がったもんを引っこ抜くからな!」
「ひいいっ!」
「兄様下品です」
眉をしかめ
一緒に風呂に入る
「しかし似てない兄弟ですね」
「蒼太と巫女が兄弟な方がしっくりくる」
「年が離れているからな」
蒼太が巫女と話す間
宮司は誠史をじっと見つめていて
「君は若いのに宮司なんだね」
誠史は宮司に笑いかけ
「兄が巫女になったので」
宮司が無表情で答える
「生意気だが可愛い弟だ。仲良くしてやってくれ」
「えっと…それはどっちの意味で?」
「どっち?とは?」
「彼は攻める方?受け身な方?」
「どちらかというと受け身な方がいい。ぶち犯したい顔してるし」
「お、おい誠史…剛志…」
宮司に迫る二人に
「お前らぁ…」
ゴンッ
ゴンッ
「あいたぁーっ!」
「バカ…」
巫女の拳が炸裂した
「危険だから奴等に近づくな」
「はあ…」
裏山
ザクッ
ザクッ
穴を掘り
「ふう…」
汗を拭った猿渡が狸と鬼の面を投げ入れる
「ごめんね。君達に恨みはない」
面に向かって謝罪する
「代わりに君の奥さんと親友達は大切にするから」
カタカタッ
狸の面が抗議するように鳴るが
バサッ
バサッ
それを封じるように土がかけられていった
忘れさられた狸と鬼は後ろの山に棄てられた
続く
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