アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
ー柳原side20ー
-
「うっ……っ、……ぅえ」
まもるさんとかいとが家を出てから、また余計なことを考えてしまって、トイレの便器と向かい合っていた。固形物は何も食べていないため、出るものなんてもう胃液位しかない。徐々に手と足の先が痺れてきて、目の前も砂嵐のような星が飛ぶ。……結構やばいかもしれない。
「ただいまー!ひろにぃ~あれ、布団にいない?どこー?」
救世主のようにかいとの声が玄関から聴こえてきて、俺はトイレのドアを内側から力なく叩いた。
「ひろにぃ?あ、開けてもいいの?!」
「……あけ、て。」
「ひ、ひろにぃ!?大丈夫!?きぶんわるくなっちゃった?……帰るの遅くてごめん、ほんっとごめん!!」
かいとは焦った様子で、俺の背中を摩った。かなりテンパっているものの、慌ててうがい用の水と洗面器を持ってきてくれたり、スポーツドリンクを飲ませてくれたりと機転を利かせてくれた。
「まだ気持ち悪い?」
「……うん。手と足痺れちゃって、立てない。ごめ、ごめん。迷惑かけちゃって。」
「そのままだと危ないよ……病院に行こ?たろにぃに電話してみるから!!」
そう言ってまだ仕事中のまもるさんに携帯へ電話をかけて、現状説明をしてくれた。電話口から焦った声で“後から僕も行くから!”と言った言葉だけは聴こえてきた。
「タクシー呼んでくれるって!!それまでちょっと横になろ?」
横になる時も、仰向けで寝ずに横を向いた方がいいとか、寒気で震えていると毛布を持ってきてくれたりとか、あの何も考えてなさそうなかいとが全てしているとは思えないほど手際が良かった。
「かいと……なんか、すげぇ慣れてんのな。」
「あー……俺、週末だけヒーローもんのイベントのバイトやってるけど、全身タイツとか仮面とか、やっぱ慣れないうちはぶっ倒れる人多くってさ?先輩からどうしたらいいとか教えてもらったんだ~。」
全然悪党じゃないと笑うと、かいともそう思う~と困ったように微笑んだ。
「そうだ……ひろにぃごめん、片井先輩に怪しまれちゃった。名刺まで家の前へ落としてきちゃってもう俺ダメダメだ……ほんとにごめんなさい。」
「はは、それはもうバレてるなぁ~。……いや、元はと言えば隠そうとした俺が悪いんだ。だから気にしないで?」
俺の事嫌いにならないで~と涙をためながら抱きついてきたかいとは、いつも通りの幼さだった。
「大事な人なのに、どうして隠すの?」
「大事な人だから、心配かけたくないんだよ。」
「……うーん。たろにぃも同じようなこと言うけど、俺はその気持ちわかんないよ。片井先輩も、絶対に頼って欲しいって思ってる。頼ってくれたら絶対安心するもん。知らないところで無理されるほうがもっと気が気でなくなっちゃう!」
その発言に返す言葉は本当に無い。多分片井くんも同じことを言うだろう。だけど、お互いのために知らない方がいい事だってある。……例えそれが恋人同士だろうと。
「体調悪いのに怒っちゃってごめんね?……タクシー来たから病院に行こ?おんぶするから掴まれる?」
「うん。ありが、と。」
だけどそれを理由に、他の人に迷惑かけてちゃ意味が無い。それは痛いほど分かってる。……病院で落ち着いたら、俺なりにちゃんとケジメを着けよう。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
20 / 26