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ー柳原side23ー *
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とうとう警察が動き出してしまった。俺には内緒にしていたようだけど、1人の看護師が口を滑らせたのだ。……親父にも連絡が来てしまっているのだろうか?……全部全部、俺のせいだ。
病院を抜け出して、家までタクシーで帰ってきた。家のドアに鍵はかけられておらず、そのまま開けてリビングに向かう。
「……父さん。」
「あ?……二度とツラ見せんなって言ったよな?」
あの時と同じ、冷たい表情。どうしたら親父の機嫌を損ねずに済むだろう。
「ごめんなさい。でも……俺の居場所はここしかない……。父さんが……頼りなんだ。お願いします……見捨てないで、お願い。……独りは怖い。」
「なんだぁ?ひっさしぶりに可愛いこと言うじゃねぇか。……こっちに来いよ?」
素直に気持ちを伝えると、親父はいつからか見せなかった笑顔を俺に向ける。……良かった。これでまた元通りだ。こうやって、俺が我慢すればいい。
「ホントてめぇ、千尋にそっくりだなぁ?何度痛い目にあっても俺のとこに帰ってくるんだ。ほら……歪んだ顔、見せてみろよ……オラッ!!」
母さんにしていたことと同じように、何度も何度も顔やお腹、脚などを殴る。倒れた俺の頭を踏みつけると、強引に服を全て脱がされた。
「昔は毎日こうしてたなぁ?……また俺の性処理役にしてやってもいいぞぉ?」
そう言うと、親父はズボンのベルトを外し、自分のモノを出してみせた。俺の穴を濡らしたり、解したりすることは一切なく、そのまま強引に俺の中へと挿入してきた。
「あっ……、ん、や……ンンっ、いた、い、痛い!いたい!!」
「きっつ……お前最近男とヤってねぇのかぁ?めちゃくちゃ締まり良いじゃねぇか……オラッ、声聞かせてみろよっ!?」
「んあっ……あっあっ、や、んんっ、っ」
「はっはっはっは……滑稽だなぁ??こんな目に遭って気持ちよがってんのかよ。この変態が!!」
下の穴は、切れたであろう生暖かい血が流れ、それでもなお、俺の陰茎はどんどんと固くなっていく。俺は我慢の限界になり、自分のを扱くと、溜まっていたものが一気に顔や身体に飛び散った。
「あっ……あああっ、ンンンンンッ……」
「なんだもうイッちまったのか?じゃあ俺も良くしてもらうか。……首絞めっとよ?めちゃくちゃ下締まんだよ。首絞めセックス、やったこと無かったよなぁ?ほら、良い顔して見せろ……っ!」
「……っ、あ……くる、しっ……」
俺に馬乗りになって、親父はあの日のように力一杯首を絞めてきた。だけど俺にはもう抵抗する力がない。……俺の人生は、こんなに呆気なく終わるのか。そんなことを茫然と考える。
……頭には、片井くんとの思い出が走馬灯のように浮かび上がる。2人で幸せになりたかった。
……でも。
「お前のせいでサツに疑われてんだよっ。……どうせ捕まんなら、お前を殺して犯しまくってやるよ。」
「……や、め……っ」
やっぱりそうだ。俺のせいで父さんは……。
俺の居場所は……。
「真尋!!!!!!てっめ……真尋を離せ!!!」
首を絞められて意識が飛びそうになった瞬間、靴を履いたままの片井くんが父さんを引き剥がした。……どうして、片井くんがここに。
「……ゲホゲホっ、っゲボ……はぁっはぁっ」
「勝手に入ってきやがって!…誰だテメェ?…邪魔すんなら殺すぞ!!」
そう言うと親父はキッチンから包丁を持って、徐にこちらへと向かってきた。
「だめ……いや……やめ、て……まも、る。逃げて……お願い!!守!!!!!!」
父親が包丁を振りかざした瞬間、ギュッと目を瞑るが、包丁がカランと床に落ちる音がして、ゆっくりと目を開けた。
そこには床で羽交い締めにされている親父が、抵抗も虚しく、片井くんの手で押さえつけられていた。落ちているナイフも、親父から届かないように、勢いよく蹴って部屋の端まで飛ばした。
片井くんに怪我がなかった……。そう確認した瞬間、まるで何かが壊れたかのように目から大粒の涙が溢れてきた。
「……もしもし、警察ですか?ナイフを持った男に襲われかけました。息子に強姦、絞殺未遂もしています。今すぐ来てください。救急車もお願いします。」
片井くんは、自身のカッターシャツを器用に歯で破り、それを紐替わりにして後ろ手に親父を拘束する。一段落すると、慌てて俺の方に向き直り、転びそうになりながら必死に俺の方へ走ってきた。
「真尋!!…っ、真尋……っすまん、なんでもっと早く……。こんなに痣だらけで……っくそ。でも、今より遅かったらって思うと……っ、手の、ふるえ、止まんねぇ……」
柄にもなくテンパった片井くんは、両手を震わせながら、俺の事を強く抱き締めた。今にも泣いてしまいそうな表情を見て、俺はやっと事の重大さに気づいた。その手は、父親によってできた痣をそっと撫でては苦しそうに抱きしめ、何度も何度も俺を確認しているようだった。
「大事な人……危ない目、遭わせて……なに、やってんだろ……俺。ほんと……ごめん……。」
「俺のことはいいんだよ!!!なんでいつも……お前は、お前を大事に出来ないんだ!!……愛してるんだ。失いたくない。俺のために、もっと自分を大事にしてくれ。頼む……頼むから……。」
後頭部に手を当てて、さっきよりも強く俺の事を抱き締めた。“ごめん”と言う度に強くなる腕の力。それを感じる度に俺の目から流れる大粒の涙は、静かに片井くんの肩を濡らした。
程なくして、警察や救急隊員、黒澤先生まで俺のところに駆けつけてくれた。全裸で、精液まみれの俺から一旦片井くんを引き離して、濡れタオルで優しく拭いてくれる。俺は情けなさが込み上げてきて、嗚咽が止まらなくなった。
「……遅くなって悪かった。怖かっただろう。もうすぐ病院へ行くからな。」
近くにあった毛布を身体に被せてもらい、冷え切っていた身体は徐々に暖かくなる。その安心感に意識を手放すのも早かった。
「真尋……真尋?!」
「片井落ち着け!……大丈夫だ。大丈夫だから。」
遠のく意識の中で、俺の名前を呼んで必死に手を握る片井くんがいる。もう俺の命は、俺だけのものじゃないんだと痛いほど実感した。
俺の居場所はこんなにも近くにあったのに、どうして見失ってしまったんだろう。自分のことでいっぱいいっぱいな俺を、どうか嫌いにならないでいて欲しい。
愛する人の腕の中で、俺は長い長い眠りについた。
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