アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
文化祭
-
ステージから降りる僕を沢山の拍手が迎えてくれて、そのまま涙を隠すように雄一のもとに向かった。
「累!」
顔を上げてみた雄一の晴れた笑顔に、これでよかったのだと思えた。
人目もあるのに、構わず雄一は僕を強く抱きしめた。
その香水の香りと逞しい腕に安心する。
やっぱり今回のことは、小心者の僕には、ちょっとだけ怖かった。
「ずっとお前のこと可愛いと思ってたけど、お前かっこいいとこあるんだな!惚れ直した!」
こうやって、真っ直ぐ言葉をかけてくれる雄一に、僕なんて毎日惚れ直してるって、思う。
頑張ってよかった。
うん、僕、頑張ったんだ。
また涙が溢れて、少し震えた僕の体を雄一がいっそう強く抱き留めてくれる。
「累」
原野に呼ばれて、驚いて顔を上げた。
こいつは、今まで僕のことをチビブタって呼んで、名前を知ってるかさえ怪しかったのに。
原野は少し照れ臭そうに顔をしかめたまま、僕の頭をぽんと一度撫でた。
「見直した。ルリとお前が友達になったんなら、仕方ねーから仲間に入れてやるよ」
原野にだけは、一生恨まれるんだろうって思ってたのに。
「……なん、だよ……えらそうに……っ」
涙を見られたくなくて、また俯いた。
「………許して、くれて、……りがと……。純也……」
ルリ君は、僕達のために売られた喧嘩を買った。
それなのに、突然訪ねてきた女の子を連れて参加しようとして、僕をサポートして、さらには優勝間違いなかったのに、それを捨てて困ってる人を助けた。
きっと僕はそうはなれない。
今回、僕の勝ち方は褒められたものじゃなかった。
それでも、頑張った。
僕は、高校生活を頑張ったんだ。
頑張って、よかった。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
41 / 75