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不穏
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俺には、他人の喘ぐ声を聞きながら読書をするなんていう趣味は持ち合わせていない。
せっかくの読書タイムを邪魔されたことに若干イライラしながら、教室を後にした。
そして無駄に広い、装飾や高そうな花々が並ぶ中庭を通り過ぎようとしたその時、ある視線が俺を貫いているのに気付いた。
「……は…?なんだ、あの人……」
中庭の一番隅にある大きな木の下、そこに黒い人影があった。
全身黒ずくめで、顔も黒いフードを被っていてよく見えない。
怪しい……怪しすぎる。
年齢どころか、性別さえもわからない。
やがて、その人影はこちらに向かってゆっくり近づいてきた。
「ひ、」
あまりにも気味が悪く、逃げだそうと思った。
なのに、俺の足は地に根が生えたみたいにびくとも動かなかったのだ。
いよいよ、人間なのかも怪しくなってきた。
人影は、俺と数メートルまでに距離を縮めると、そこでゆっくりと口を開いた。
「君、今の生活に飽きを感じないかね」
少ししゃがれた、女とも男ともとれる声だった。
「はあ……?」
「確かに、君は平和な生活を送っている。だが、心のどこかで…つまらないと、思っているのではないかい?」
なにを言ってるんだ、こいつは。
急に話し掛けてきて、初対面なのにどうしてそんなことが言えるんだ?
俺は沈黙を貫いたが、その人影は気にすることなく喋り続ける。
「君に、これを授けよう」
唐突に、そいつは懐から何かを取り出した。
よくみると、小さな小瓶のようだ。
中には、ピンク色の何やら怪しげな液体が入っている。
「これを飲めば、君に決して飽きることのない、生に満ちた日々が送れることを約束しよう」
そう言うや否や、そいつは動けない俺の制服のポケットにそれを入れると、またゆっくりとどこかへ消えていった─────
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