アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
日常を為すべきだと、刹那
-
「本当に桜川春乃なんだよな?」
店を出て一縷は開口一番にそう言った。ご丁寧にフルネームで呼ばれ、俺の心臓は高鳴る。
学園の方向へと足を踏み出すと、自分の足が震えていることに気が付いた。
「そうだよお~よく分かったね~」
「お前、その口調やめろ。今日も言っただろ。それに、お前の今の容姿に全くそぐってない」
「相変わらずグサグサ言うね~これは俺のアイデンティティなんだってばあ」
俺が言うと、一縷は「さっきは普通だっただろ。隠そうとしても無駄だから」と真面目な顔をして言った。その顔が真面目さと何となく悲しみも含んでいるように見えて、心がチクッと痛む。
これ以上、嘘は付き通せないか…。
「…別に隠したかったわけじゃない」
素の口調で話すと、心の中の大きな塊が少し小さくなったような気がする。
そう言えば、学園の生徒に素を見られたの始めてだ。
一縷は一瞬驚いたような表情を浮かべ、「それが素なの?」と声を発した。
「うん、そう」
ああ、一番バレたくない人に知られてしまった。
よりによって俺のことを嫌っているであろう、一縷に。
どうなるんだろ、これから。
ばらされたらどうしようか…。でも別に一縷の弱みを握ってるわけでもないし、「俺のことは黙っていて」なんて言う義理もない。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
27 / 174